【レポート】 基礎編2 シェアリングエコノミーが拓く 新しい暮らし シェアリング@千代田

「シェアリング@千代田」は、自分と時間をもっと活かすために、シェアを暮らしに取り入れるためのアイデアをつくり、試してみるプログラム。全5回で行われる基礎編は、アイデアづくりのヒントとして、実践者のみなさんの活動を知ることから始めています。基礎編2のテーマは「シェアリングエコノミーが拓く 新しい暮らし」です。

ゲストの方のお話から、個人の所有する場所やスキルなど有形・無形資産を、他の人も使え、シェアする仕組み「シェアリングエコノミー」、それを積極的に地域で活用する「シェアリングシティ」の最新情報と経験を学び、地域の中でシェアする関係構築には何が必要なのか、考えました。

1.シェアリングエコノミー入門  ~ シェアで生活や仕事はどう変わる?

ゲストの一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長の佐別当さんは、シェアリングエコノミー協会の事務局長として、シェアリングエコノミーの普及・推進に取り組んでらっしゃいます。

その目的は、共助社会の実現です。シェアリングエコノミーのベースとなる「シェアリングサービス」は、これまでのBtoCBusiness to Commerce:店舗(企業)から顧客へ)で一方的にサービスを受ける仕組みではなく、CtoC(顧客から顧客へ)で双方向にやり取りするサービスです。

これは、個人が、自分の持っている資産を通して提供者になれるということであり、どんな人にも提供者となるチャンスがあるということにもつながります。子育て中の女性でも、高齢者の方でも、誰でも自分の持っている資産(モノだけでなく、スキルや経験も)をこの仕組みの中で活かすことができると言えます。

例えば、空きスペースを会議スペースやイベントスペースとしてシェアする「スペースマーケット」や、送迎・託児を友だちとシェアする「AsMama」、個人のクルマをシェアする「Anyca」などがあります。
(詳細は「シェアリングサービス事例集」をご覧ください)

最近では、地方自治体における「公助」のサービスに代わるものとして、シェアリングの仕組みを活用する動きも出てきています。

自分たちの困っていることをお互いのリソースを利用し合いながら助け合うような、昔あった「共助」の仕組みを、テクノロジーを駆使したシェアリングの仕組みを使って構築することもできるのです。

例えば、北海道天塩町では、マイカーの相乗りサービス「notteco」と提携し、近隣エリアの新たな交通手段として公共交通では補えない移動を補うなどのケースが出てきています。

一方で、シェアリングサービスの一つの懸念は、個人同士で取引することへの不安ですが、これについては、ITテクノロジーを活用したマッチングや、相互評価といった形で安全性が担保できるのは、と佐別当さんは考えてらっしゃいます。

また、自分たちの暮らしにシェアリングという概念を取り入れることで、例えば、シェアすることが前提となると、ワンランク上の車や家を購入することができ、購入したものが負債ではなく、資産になるといったような考え方もできるようになります。

一人では難しいことも、シェアを前提にすればできる、もしくはプラスなものと考えることもでき、それは、一人ひとりの暮らしをより豊かにすると言えるのではないでしょうか。

2.シェアリングシティで暮らすとは?

ゲストの村瀬さんは、自立型のまちづくりや栃木県の遊休不動産を活用したシェアスペースの運営、公共スペースを活かしたイベントプロデュース、遊休地を活用したグランピングプロデュースなどに取り組んでいらっしゃいます。

村瀬さんからは「シェアリングシティで暮らすとは?」をテーマにお話頂きました。

日本は、人口減少が本格化し始め、社会を支える人が減少し、逆に支えられる人が増え財政は一層、厳しさを増し有給不動産は増え続け、自治体も含めて歳入減少に直面しています。各自治体では、今のようなフルパッケージ行政サービスを提供することが困難であるという現状にあります。

そんな中で活用できるのが、シェアリングエコノミーによって、民間セクターからも公共サービスを補完する「シェアリング・シティ」という考え方です。

シェアリング・シティで目指すのは、公共サービスの補完による歳入増加や、それに伴った、より効率的で持続可能な公共サービスへの転換、そして、地域を超えたノウハウの流通基盤を整備することです。

また、シェアリング・シティ化を通じて、地域の有休不動産を活用したり、医療福祉サービスや子育て環境を充実させたりといった事例も出てきているそうです。

住民の方、一人ひとりが、まちを変えていくことは難しいですが、公共サービスとされているものを、住民の方で補い合うという考え方はできるかもしれません。

3.対話「千代田区であったらいい、もっと使いたいシェアサービスとは?」

ゲストのお話を参考に、アイデアシートの「千代田区で、こんな困りごとがある、十分使われていないリソースは?」「提案したいシェア・サービスは?」の項目を参考に、自分の生活や地域のことなどを想定しながら、アイデアを考えていきました。

参加者より、以下のようなリソースとサービスのアイデアが挙げられました。

▼リソース

・賞味期限切れ近くの食品

・遺産相続できなかった財産

・皇居とその周辺の文化施設

・若い人の暇な時間(夜など)

・ちょっとした区内の宅配サービス

・高級食器や家電

・電車のラッシュ時と、それ以外の時間の込み具合の違い

・公共施設などの跡地

・神保町、御茶ノ水周辺のスポーツ用品店、楽器店、古書店など

・大学やお寺などの空間

・本

・区民の持っている経験や知識/区内在勤の会社員などのスキル

・まちの歴史等に詳しい方の貴重な情報

・古いしきたりや、礼儀作法を知っているお年寄りの方

▼サービス

・海外旅行者と地元住民がつながるような一期一会の交流サービス

・早朝や深夜に受けられる介護サービス

・自分の関心や研究内容をシェアできるようなプラットフォーム

・料理の下準備などを、シェアし合えるような仕組み。

・好きな形で地域とつながる仕組み

・洪水・地震だけでなく、生活の中で危ない場所など検討していくハザードマップ

・高層ビルやマンションの眺望を地域住民にもシェアできる仕組み

・千代田区内で行われる小さなイベント情報をシェアする仕組み

・学生と地域の人がつながるように、大学の空いている部屋や講義時間などをシェア

・プロジェクト学習をしたい高校生を、地域が受け入れてもらえるような仕組み

・お年寄りが、子供の面倒をみながら作法などをしつけられるようなサービス

・区外から通勤しているパパとママと地域の方がつながる仕組み

・公共などを活用した千代田区内の外国人観光客のための宿泊サービス・観光サービス

・アクティビティを誘発するようなシェアオフィス

・自然治癒力を高める(代替医療)の情報などをシェアできるような仕組み

また、参加者の方からは、シェアリングサービスに対して、

・CtoCの個人取引であるため、危険はないか

・既存産業への影響がでるのではないか

といった懸念の声もありました。

一方で、

・これまでの商習慣の概念を覆す

・新しい働き方やモノの価値を創出する

・行政サービスのあり方を変える

などの可能性があるとシェアリングの仕組みに興味があるという声も多く聞かれました。

千代田区においても、眠っている資源を安全に活用したシェアする仕組みが作ることが期待されます。