【レポート】基礎編3 住まいをシェアしよう シェアリング@千代田

基礎編3のテーマは「住まいをシェアしよう」です。マンションを共同で建て、暮らす「コーポラティブハウス」を運営する方と、建物を共有する「シェアハウス」を運営する方のお二人をゲストにお迎えし、それぞれのご経験を伺いました。

マンションは専有部と共有部から成っており、元々、シェア(=共有)をするもの。昔はなんとなく、住んでいる人同士でいろいろなものを共有していましたが、最近では専有している部分にばかり目が行き、共有部分を見逃しがちです。

そこで、シェアを前提とする「コーポラティブハウス」と「シェアハウス」の経験から、改めて、マンション暮らしでシェアを推し進めるコツを学んでいきます。

1.コーポラティブハウスの経験からマンションライフでシェアを活かす方法を考える

お一人目のゲストは、NPO 都市住宅とまちづくり研究会 事務局長の関 真弓さんです。

NPO都市住宅とまちづくり研究会(以下「としまち研」)は、「住み続けたい」「商売を続けたい」という方のために「①地権者の方の希望を反映した家(共同建替え)」を、そして、「人と人、地域とのつながりをつくる」ことを目的として「②コーポラティブ方式による住まいづくり」を行い、2つを併せて「地域コミュニティの核となるコーポラティブハウス」を作り、運営しています。

コーポラティブハウスの経験がマンションライフでシェアを活かす方法のヒントとなるということで、なぜ、シェアの意識が必要なのか、どんな取り組みをしているかをご紹介していただきました。

そもそも、マンションは「運営共同体」であり、区分所有者同士のコミュニケーションがなければ、マンション住まいは円滑に進まないはずです。しかし、最近は、共用部の維持管理への意識の希薄化管理活動への参加の困難化役員のなり手不足合意形成の困難化地域からの孤立などがあり、コミュニケーションが上手くいかないケースが増えています。マンションの管理が停滞あるいは不全になると、生活環境の悪化、資産価値の低下、スラム化などと悪循環に向かい、近隣や地域社会にも大きな影響を及ぼす可能性も出てきます。

そこで、マンションライフでも区分所有者同士のコミュニケーションが必要となってきます。としまち研のコーポラティブハウスで行っている取組みは、これらの参考となります。

シェアする仕組みといっても、奇をてらったものや大がかりなものではなく、日常の生活の中での必要なことを一緒にやるというスタイルです。

例えば、「植裁」。シェアハウスの敷地内に植える植物について、その樹種の検討・選定から住民が一緒に行います。実際に花壇をつくったり、植えるところまでも住民同士で行います。一般的には業者に委託してしまうようなことを、自分たちで取組むことで、それがコミュニケーションの一つとなり、さらに、経済的にもメリットが生まれます。

さらに、「防犯・防災対策」もコミュニティとして持続するための工夫が見られます。挨拶などを推進する「防犯5か条」もその一つです。他にも、消火器訓練やAED体験、地震体験など意識やスキルを高めるイベントの企画・実行、防災勉強会を受講、地域のマンションや町会との情報交流会などを行っています。

さらに、その他のお楽しみの交流イベントとして、「IHクッキング体験」「もちつき」「森林ツアー」「流しそうめん大会」「花火鑑賞」「バーベキュー」「ラジオ体操」などを行ったり、「神田祭」への参加などもあります。

こうした、日常の生活に関わる様々なシェアを通じて、区分所有者同士のコミュニケーションを図ってきています。色々と話し合いなどをまとめるは大変ですが、住民の方の良い暮らしをしたい、良い建物を建てたいという気持ちで、おのずとまとまっていくそうです。

2.シェアプレイスの運営事例を通して住まいのシェアを考える

2人目のゲストは株式会社リビタ 資産活用事業本部 地域連携事業部長である土山 広志さんです。

土山さんは、数多くのシェアハウスを運営されてきました。また、株式会社リビタは老朽化した既存ストック(建築物)の再生・活性を主とし、「SHARE PLACE」という名前で各地にシェアハウスを展開されてきました。

土山さんご自身も、シェアハウスの運営を通じて、「シェア」という概念が近年、急速に進化していることを感じられたそうです。

まず「シェア1.0」は「モノのシェア」。

そして「シェア2.0」は「場所・人のシェア」。

そして、最近は「シェア3.0」=「価値のシェア」に変化してきているとのこと。

シェアハウスに住まれる方についても、単に場所を所有するだけではなく、価値観が同じ人とつながりたい、シェアハウスの中で何か価値あるものを得たいという意識の方が増えているそうです。

シェアハウスであっても、コミュニティ運営を円滑に行うために、仕掛けは行っています。

例えば、「セミナー」や「日食鑑賞会」、「マラソン大会」、「他のシェアハウスとの交流フットサル大会」など。シェアハウス内にいらっしゃる方の特性や特技や知見を活かしたものです。また、仕掛けをするためにも、シェアハウス入居者のプロフィールも把握するようにしています。

一方、都心型ではなく、郊外にあるような多世代が暮らすシェアハウスでも様々な交流を促すための仕掛けをされています。それは、餅つきや花見など日本で伝統的に行われている四季ごとの催しであり、日常のことを定常的に繰り返すことが、持続的にコミュニティ運営を行う一つのコツであるとのことです。

3.住まいのシェアのためのヒント

住まいのシェアを行うためのヒントをいくつか、お二人からもお伺いすることができました。

交流したくない人にいかにコミュニティに入ってもらうかという質問に対しては

食のコンテンツで参加のハードルを下げる。餃子づくりのような工程を分割しやすく調理に取り組むことで、何か一つのことを一緒にやっているという雰囲気を作り出すことができる。

それぞれの人の仕事のスキルを活かした役割を提示すると参加意識が高まってくる。

人と付き合わずに生きていけないことを理解していただくようにする

というお話がありました。

人と関わるのが苦手という人も、全く人と関わらずには生きていけません。いかに負担なく関われるかというルール作りがポイントになってきます。

まずは、利便性やコスト面の理由から集まったコミュニティに対して次のステップに移行する接点をつくること。そういった人が集まる場の作り方は奇を衒ったものではなく、日々の生活の中の季節の行事などから取り組むのがまずはよいのではないかとのことです。

さらに、住んでいる方に、当事者意識と住まいをシェアしているという意識を高めてもらうためには、マンションの植裁や修繕など管理会社にお任せしがちな共有部の管理を自分たちでやってみることも、最初の一歩となりそうです。