【レポート】アーバニスト@千代田 ネクストステップミーティング
2月21日に、それぞれのアイデアから始まったアクション実践の報告、継続的な活動実施や新しいアクションアイデについて検討する「アーバニスト@千代田 ネクストステップミーティング」を開催しました。東京大学の中島先生にも参加頂き、アクション実践やふりかえりに対するコメント等を頂きながら、千代田におけるアーバニストについて、また、これからの可能性について話し合いました。アクション実践者の方など中心に、16人の参加がありました。
アクション報告
① スナックちよだスナックちよだ キックオフイベント開催!
~家でも学校でも職場でもないもうひとつの居場所~
本プロジェクトは「ちよだをつなげる女性30人」から生まれた企画で、メンバーの「家でも、学校でも、職場でもない居場所を作りたい」「出会った人が気軽に挨拶できる関係をつくりたい」という思いでスタートしたプロジェクトです。
本物のスナックでの開催も検討したそうですが、まずは、区役所の10Fの食堂が色々な人の居場所になっていることもあり、第1回目をここで実施することとなりました。当日は、老若男女50名以上の人が参加しました。
また、フラッと来た人や、図書館帰りに立ち寄りましたという人、一人で参加する人が他の人とお話しをする様子なども見られ、実施してみて、改めて、地域の居場所として、何かをする目的もなく、ただ行くだけの場所。いつ行っても帰ってもよい場所というのが求められていたのではないかと実感したとこのことです。ぜひ、スナックの視察もしながら場所も検討をし、継続的に開催したいと考えているとのことでした。
中島先生からは、アーツ&スナック運動[1]として空きスナックやお店の使っていない時間を地域の人が活用する取組みがあること、また、スナックの独特の空間が親密性も高めることになるので、場所についても検討してもらいたいとのアドバイスがありました。
② 千代田での丁寧な暮らし”を話そう」ワークショップ
本プロジェクトは「何でもない日常」「当たり前の暮らし」をいとしく思える時間をあえてとることで、今をよりよく生きれるのではないかと考え、これを千代田の人と一緒に考えたいという在住の黛さんの思いから始まったプロジェクトです。
第1回目のワークショップは、書店の2Fのスペースにて開催をしました。丁寧な暮らしといっても色々な視点がありますが、今回は、「時間」に着目し、「暮らしの中で大切にしていることは」「便利な世の中になって自由な時間を手にしているのに実感がないのはなぜ」をお題に話し合う会となりました。
対話をしてみて、「今日のこの時間こそが丁寧な暮らしだと感じた」という参加者の人の声から、提案者の黛さんご自身も「丁寧な暮らしをどうするか、実践するかということではなく、丁寧な暮らし考えること自体に価値がある」ということに気づいたそうです。また、「暮らし」をテーマにするとアプローチが多彩なので、人なりの切り口で捉え方、提案などができるのではと可能性も感じられたとのことです。
一方、ワークショップを実施してみて、「完璧を目指すと、第1回で疲れてしまい、継続するモチベーションがなくなるので、やりながら作っていくもの。やり残したことがまだまだあると思った方が、もっとやりたい持続していく」ということに気づいたという話もありました。
当初、効率が重視される千代田区の中での「丁寧な暮らしを考える」というのが時代に逆行していないかという不安もあったそうですが、参加者の人のまた参加したいといった反応に手ごたえを感じられたようです。また、普段、表に出ない暮らしのことだからこそ、他の人の考えを聴くことで発見があったり、自分の暮らしぶりを認めることになるのではと、暮らしに関する対話の意義も感じたという話もありました。今後は、それぞれの得意や興味を持ち寄り、それをテーマに展開していく予定であり、次回は5月ごろを予定しています。
また、本プロジェクトのメンバーとしてお手伝い頂いた道井さんからも「活動は、考えすぎているよりは、まずはやってみることが大事、また、活動は1回では答えはでないので、やって、続けていくのが大事」というのを強く感じたとのコメントもありました。
③ 身体を動かす!一緒に楽しむ!つながる! 合同体験会
本プロジェクトは、事務局スタッフの複数の団体で一緒に体験会を行うことで、参加しやすくなるのでは、より有効ではないかとの提案からいくつかの団体の共感を得て実現したプロジェクトです。エスコートダンス、ボッチャ、三陸の和ぐるみを使った作品づくり、ウォーキングサッカーに取り組む4団体が協力して体験会を実施しました。また、会場は、大妻女子大学の体育館を提供頂き、当日は、小さいお子さん連れからご高齢の方まで、また、スタッフ同士もお互いに体験し合おうという形で、総勢40名近くで体験をするイベントとなりました。
体験会を実施してみて、一般社団法人エスコートダンス協会の野口さんからは、ダンスにそんなに興味がいなという方も、それぞれの競技を体験するという流れの中で、エスコートダンスの良さを体験いただいたのではないか、また、みんなでダンスをするのは一体感を感じるいい体験だったのではという感想がありました。また、今後は、せっかくのつながりを活かし、それぞれの活動とコラボするような企画(和ぐるみカスタネットを活かしたダンスなど)に挑戦したいという意気込みも話されました。
千代田区障害者福祉センターの堀田さんからは、ボッチャは、障害者スポーツとされているため、障害を持っていない人には馴染みのない人が多いが、一度でも体験できると、だれでもできると感じてもらえると考えていたそうで、今回が、ボッチャの普及とえみふるをPRできる絶好の機会となったとという感想がありました。
また、今回施設提供を頂いた大妻女子大学の堀口先生(食育ボランティアグループ ぴーち)からは、それぞれの団体が活動を単独でやっているのは目にしているが、参加するのにはハードルがあったため、今回体験をさせていただいていい体験となったという感想や、体育館で小さいお子さんも走り回っているのも親子連れの方にとってもよい機会になったのではないか、さらに、保育園栄養士を目指す学生にとっても地域の人と触れ合うよい機会になったとのコメントがありました。
④ ちよだの100年企業とこれからを考えよう!
本プロジェクトは、秋葉原で社会労務士事務所を構えるSさんの発案によるものです。Sさんは企業がそのまちにある意義は地域や社会に貢献することことであり、これからの時代はむしろそのことに企業価値があるのではとお考えです。そのため、企業においても、まちの未来について考えていくことは大事であり、その時に、100年その地にありつづける100年企業から学ぶことはあるのではという思いから、100年企業のお話からまちのこれからについて考える会の開催となりました。
第1回目のゲストは、400年以上神田で造り酒屋を営業している神田豊島屋の取締役代表の木村さんでした。会社を継いだ経緯や思い、豊島屋の歴史やエピソード、これからの事業展開について、さらに、神田への人流を増やすため神田限定にした日本酒の販売戦略についてのお話頂き、神田を日本酒で盛り上げたいという木村さんのお話に共感したことなどが報告されました。
また、今回実施してみて、千代田の未来を考える時に、テーマを絞ることは必要だと感じられたそうで、防災、教育など色々な切り口と100年企業という組み合わせで実施する具体的な展開スキームを作りたいという話となりました。また、この企画は、オープンソースとして誰でも活用し、テーマに感心のある人と企業をつなげるプラットフォームになればいいのではと考えてらっしゃるそうです。
さらに、今回、運営のお手伝いを頂いた松川さんからは、とてもインプレッシブな会で参加できてうれしかったこと、千代田をつなげる30人の第2期生として「しょうけいちよだ」に関わっていることもあり、方向性は違うながらも、お手伝いができてよかったという話がありました。
⑤ 神田の「オーラル・ヒストリー」~語りでまちをつなぐ
~神田の声を聴くワークショップ~「きく」ことでまちと人と繋がろう~
本プロジェクトは、大手町にある稲荷湯の三代目のAさんのアイデアによるものです。オーラルヒストリー(口述歴史)の手法を用いて、まちに集う人に想いや記憶を聴き残すということを通じて、神田についてもっと知っていきたいというのが狙いです。
1月に開催した「神田の声を聴くワークショップ」についての報告がありました。このワークショップの開催を通じて、さらにはプロジェクトの方向性を考えていく中で、それぞれの人の語りを残したいが、そのことよりも、オーラルヒストリーを聞くことを通じて、地域にいる人がつながっていくというのを自分は重要視しているのが気いたそうです。そのためには、一緒に活動をしてくれる人を募っていく必要があり、まずは第1回のワークショップの参加者の方へのインタビューから始め、活動を広げつつ、聴いたオーラルヒストリーをWebサイトで発信できたらと考えているとのお話がありました。
また、活動をサポートしている事務局メンバーからは、「聴くことは当たり前」と仕事でもしていることだが、オーラルヒストリーで学ぶ「聴く」は全く別ものであることを実践して感じたそうです。仕事であると、ゴールがあってその材料集めで自分はヒアリングをしているが、オーラルヒストリーでは、聞く人の大事なこと、そのときそのときの思いを、その人に関心を持って聴くことが大事だそうで、これまでしてきた「聴く」そのものが通用しない難しさもあるとのことです。こうした聞き方を学びたいというニーズも一定数あるのではと考えているそう、情報発信の仕方の工夫もしていきたいとのことです。
⑥ 千代田×嬬恋村 オンラインイベント「神田小川町雪だるまフェアに雪を届けてくれる嬬恋村と交流しよう」
アイデア提案者の大谷さんは、地域のモノこと情報を、一方流すのではなく行き交いさせる活動をしている中で、嬬恋村が千代田区の友好都市であることを知り、嬬恋村の魅力を千代田区の人に知ってもらいたいと思い、交流会を思ついたそうです。
交流を深めることで、お互いの地域で活動する人たちが相手の地域の魅力、自分の住む地域の魅力に気づき、活動していくきっかけになるイベントを作りたいと思っていたそうです。ただ、交流会と言ってもテーマがあった方がよいと、1月にある神田小川町の雪だるまフェアをテーマとし、「雪だるまフェアを楽しもう、お互いに雪だるまフェアで声がけができるようにしよう」をコンセプトにオンラインイベントを開催しました。千代田区区民の方や、嬬恋村の観光協会や町役場など総勢15名で交流する会となりました。
参加者の人からは、神田小川町のフェアの魅力や思いを知り、是非行ってみたいと思った人や、嬬恋村に行ってみたいという人もいたそうです。アンケートでは、嬬恋村の交流企画の情報がほしい、キャベツなどの有機栽培の商品を子供たちに食べさせる企画があればなどといった声もあり、今後は、新しい交流関係を作るように、また、逆に千代田区の魅力発信もつづけていけたらと考えているそうです。また、小川町の雪だるまフェアの実行委員の角谷さんには、事前収録の対談にもご協力頂き、イベント当日はその動画を参加者で一緒に視聴しました。雪だるまフェアを支える街の人の思いも知る機会にもなりました。
〇中島先生からの講評・アドバイス
ゲストの中島先生からは、それぞれの活動の着想力や、短期間でのアクション実施について高く評価されました。また、千代田でのアーバニストとして、以下が大切であり、千代田区ならでの特徴が感じられたとのコメントがありました。
①場に委ねることの大切さ
~主催者側だけで綿密に作りこむのではなく、やってみること、その場をみんなで楽しむことで、新しい方向性や広がりが生まれる。~
②多様なものを編集していく
~豊富な資源がある千代田だからこそ、それを編集して新しい価値を生み出せる(例えば、合同体験会など)~
③企業や働いている人と地域を結びつける
~中間人口が85万人とも言われる千代田区の中で、企業や働いている人と地域の出会いが大切~
また、活動している方は、それぞれの仕事や生活の中で時間をつくって活動している。忙しい毎日の中で、地域の中で動いてみること、参加してみることは、暮らしの「余白」を楽しむ時間にもなると考えられ、そのような活動が集まっていること自体が、「まちの魅力」となっている。
さらに、アーバニスト@千代田のWEBサイトをみるだけで、千代田のまちが楽しそうだというのが見える。活動が見える化することで、千代田の活力を感じるのではないか。また、そこから、「暮らしたい、働きたい 自分も参加できそうだ」という思いにつながり、まちの価値が高まっていく。また、アーバニストを広げるためにやるべきこととしては、次のまちづくりのステップへ上るということではなく、情報を発信していくこと、確実に「2回目」を実施することではないか?
とのアドバイスもありました。
これからの取組みについて
さらに、今回新たに「子どもの自己肯定感を高めるため、意見発表し合う読書会」を開催したいとの新しいアイデアも提案され、参加者から、ビブリオバトルなどの多様な読書会のアイデアや、他の団体とのコラボが有効ではないかといった、アドバイスが出されました。
また、本日アクションの報告した各プロジェクトも、今後も2回目、3回目と続けていけるように、次回の検討に着手していく予定です。