【ゼミ 第4回:レポート】多様な参加者の交流・対話の場の企画・運営法
「マンション・コミュニティ・ゼミ」の第4回が2017年8月20日(日)14:00~、千代田区役所内の会議室にて開催されました。
今回のテーマは「多様な参加者の交流・対話の場の企画・運営法」。
前回まで、つながるきっかけとしての「問い」について、また、地域で分かち合える問いとしての「地域課題」について考え、前回は7つのカテゴリに沿って、千代田区の地域課題を書き出してきました。その「地域課題」について考える場としてイベントやワークショップを企画するのが今回のテーマです。
区民のゼミ生のみなさんは、どのような交流・対話の場を企画されたのか、ご紹介したいと思います。
導入講義「人がつながるイベント、ワークショップを企画するには?」
地域づくりにおいて、どうしてイベントは必要なのでしょうか?
イベントは「ある目的のもとに、日常から外れ、人が集い、ともに楽しむ場」です。イベントによって、日頃の生活では会えない人に出会えたり、気になりながらも見落としがちなことについて考えたりする機会になります。
そうしたイベントを考える時には、「変化を起こす」ことを意識することが重要となります。つい「何をしたらおもしろいか」「どんな内容にするか」ばかりを考えてしまいますが、参加者の方が、イベント告知に出会い、イベントに参加したことで、イベント後の生活がどう変化するのか、一連の流れを考えることが大切なのです。
例えば、他にも、商店街活性化のために有名タレントを呼んでイベントを行い500人集まったものの、その後の商店街自体のお客さんは増えなかったというケースもあります。その場合、どう盛り上げるか、何人来るかという直接的な結果(アウトプット)だけでなく、イベント後にどうなったら良いか?どうつなげれば良いか?(アウトカム)を、企画する時点で考えておくことが大事なのです。
イベントやワークショップで、変化を起こしたい時には、これまでの状態で、対象者が何をしていないか、その背景にある考えや習慣は何か考えます。そして、こちらが実現したい状況で、対象者がどのように動いていたらいいか考え、前後の動き方の変化を考えます。その上で、なぜ変化できていないか?を考え、欠けている体験を補うのに、イベントやワークショップが役に立ちます。
まとめると、イベントをはじめる時はゴールから考えることが大切です。
何のためにするのか?誰のためにするのか?対象者やアウトプット、アウトカムについて考えてみることがイベントの成功につながります。
ワーク1: イベントアイデアを考えてみよう
下記①~④のそれぞれについて、参加者の方々に書き出して頂きました。
①地域やマンションで、こんな風になったらいいなと思うことは?
②そうなるには、どんな人が、日常的に、どんな行動をするようになるといい?
③それが難しいのは、なぜ?(どんな経験が足りないから?)
④イベントでは(1)どんな参加者が、(2)どんな体験をできたらいいだろう?
参加者の方々から出たのは下記の通りです。
- 子育て世帯の悩み
①子育ての悩み解決の場を増やす
②住民同士で情報共有をすること
③他の子育て世帯と会わない、休みが合わない、情報を置く場所がない
④地域に住む子育て世帯が、情報を置く場に参加できるようなイベント
- 子育て情報の継承
①子育ての先輩と後輩の接点を増やす。
②子育て情報を先輩から後輩に伝える。
③聞くに聞けないプライド。
④ちびっ子メンター制度(先輩方にメンターになって頂く)。
- あいさつできる関係
①あいさつできる関係をつくる。
②共通の話題で集まれる。
③相談できる場所がない。アイデアや企画があっても出す場所がない。
④マンション住民の方に企画・運営に参加してもらう。
- 相互支援の実現
①マンションにおける相互支援。あいさつできる。
②コミュニティへの熱意・関心がある人を見つける。
③困っていることが顕在化されない。自分から出さない。
④個々人の関心からはじめる。
- マンネリ化した防災訓練の今後
①防災訓練に参加する人を増やす。
②災害が起こったら何をすれば良いか、どう助け合えるかの情報共有
③マンションの中や地域の中でお互いのことを知らない、情報が集まる場所がわからない
④イベントに参加してもらえるように頑張る。少しずつ声を掛けていく。イベントの中で相談コーナーを設ける。参加した感を味わってもらう。
- 災害時に助け合う
①災害時に助け合えるようにすること
②あいさつを近隣同士でし合えるようにする
③喋ったことがないから。
④災害シミュレーションの情報共有の場
- 賃貸でもより多くの交流を
①出会った時に、笑顔であいさつできる。地域イベントにも気軽に参加できる。
②リーダー的な人を設ける必要
③声が掛かってこないから
④声を掛けて、初心者でも参加できる場にする
講義「人がつながるイベント、ワークショップを企画するには?」
場には①講演 ②ワークショップの2つのタイプがあります。
①講演では、参加者は聞き手。話しての専門性や話す技量が満足度を決める。コンテンツデザインが必要になります。
②ワークショップでは、参加者が主役。参加者がどれだけ参加できたか、自分で気付けたかが満足度を決める。経験のデザインが必要になります。
ワークショップの肝は、気づき。自分で深く考えることで、改めて気づくことがあったり、他の人の話を聞いて「あ、そうか」と思ったり、自分で考え、他の人の考えを聴くことで、自分のことがわかります。
例えば、自分のクセや深い思い、日頃見落としているもの、したいこと、できることなど。
そのように地域の多様な人が、違いを受け容れあい、その違いから気づきを得て、自分自身のものにしていくプロセスが、ワークショップであり、だからこそ地域のつながりづくりにワークショップは必要となります。
ワーク2:参加したい場って?
続いて「参加したい場」「参加したくない場」について考えてみました。
忙しくても参加したい場(イベント、会)があります。逆に暇でも参加したくない場もあります。
それぞれにはどんな要素があるか、20個ずつ挙げてもらいました。
それを通して、自分達が行う活動やイベントでも、どのようなことに配慮するといいか、考えていただきました。
出た意見はそれぞれ以下の通り。
①参加したい場
- テーマに興味がある
- 同年代が多い
- 自分に得になる知識人脈が得られる
- 自分だけでなく、子どもも楽しめる
- 高齢者も楽しめる
- 講師が魅力的楽しそう
- 参加しやすい日程場所
- 会いたい人がいる
- 近所
- 納得できる参加費
- 楽しい
- 成長できる
- 違う価値観の人に合える
- 社会的意義がある
- 友達に会える
- 多面的な考え方が出る
②参加したくない場
- テーマに興味がない
- 期待した内容と違う
- 自分の意見と異なる
- 仲間に入りきれない
- 難しいテーマや言葉を使う
- 言い出した後に負担を負わされる
- 対象となる年代が固定されている
- 家族のバックアップや理解が得られにくい
- 次回の参加を強制される
- 自分の意見が取り入れられない
- 時間の無駄
- 関係性が出来上がっている
- 目的が分からない
- 運営がちゃんとしていない
- 準備ができていない
- 会場の雰囲気が悪い
ゼミ生の皆さんには、イベントの役割やイベント後を考える大切さが理解いただけたようです。
- イベントは、企画者(主催者)がやりたいことを中心に組み立てられることが多いですが、参加してもらいたい人にどのような経験をしてもらうか、多くの人が参加しやすくするための準備や工夫など、時々立ち止まって振り返りながら準備していくことも大切と思いました。
- ワークショップを開く意義、イベント参加を勧誘する意義方法がよくわかりました
また、実際にイベントの形を考える中での難しさを実感したという感想もありました。
- 町会の行事の時「〇〇の相談コーナー」を設けることを検討したい。マンション内で「〇〇についての会」のようなものをもっと創ることを検討してみたい
- PRの方法について、ポスターなどの配布が実際には難しい。
- 実現したいアウトカムにつながるアウトプットを考えるのが難しい。
- 教育情報共有イベントをやるのであれば、ママさんが参加したいと思うようなものが良いかも。
今回、改めて皆さんのお話を伺って、実は多くの方が、解決したい地域課題があり、参加したいイベント・参加したくないイベントの基準をお持ちなのだということに気付かされました。
でも、実際にそれを表に出す機会が少ないのだと思います。
こうして課題と目指すゴールを共有すると共感する人が表れ、参加したいイベント・参加したくないイベントの条件に照らし合わせて考えると、より深くイベントについて考えることもできます。
皆さんがイベントを企画する時にも、こうした「参加したい場」「参加したくない場」について考える機会を持つと、より意義のあるイベントになります。
9/10(日)の公開対話についても、参加したくなる人が増えるにはどうしたら良いか、誰を、どのように誘うと良いか考えてみるのも1つの練習になります。
次回の第5回ではワークショップ進行役としての「ファシリテーター」について考え、9/10(日)の公開対話は実践として「これからの千代田区に必要なコミュニティとは?」をテーマに対話の場を設けていきます。
みなさんも、ぜひ公開対話で、これからの千代田区に必要なことを考えてみませんか?
公開対話の案内はこちらから
以上で、第4回「多様な参加者の交流・対話の場の企画・運営法」のレポートは終わります。