【レポート】交流会「社会が変わる中、コミュニティはどう変わっていく?」
2024年に11月24日・26日に開催された「未来へつなぐ これからのコミュニティヒント展」では、展示に加え交流会も実施しました。
その一つとして11月26日に交流会「社会が変わる中、コミュニティはどう変わっていく?」が万世橋区民館で開催されました。
本交流会では、時代や社会が変わってきている中で、これからのコミュニティについて考えるきっかけとするべく、神田でまちづくり・地域づくりに関わり、東松下町町会の活動もしているNPO都市住宅とまちづくり研究会の関真弓さんをゲストに、事務局の広石とこれからのコミュニティについてパネルトークを行いました。
ちよだコミュニティの今と、ちよだコミュニティラボの取り組み紹介
はじめに、ちよだコミュニティラボ事務局の広石より、千代田のコミュニティの今と、これまでちよだコミュニティラボが取り組んだことについて紹介をしました。
千代田区は、2000年ごろより都市回帰が進み、住んでから10年未満の住民が半数を占めるまちへと変化しました。
また新しい住民の人は、コミュニティの活動について「高齢者ばかり」「一部の人の負担が大きいのではないか」「顔馴染みの人ばかりで新しい人が入りにくい」といった印象を持っていることが分かってきました。
こうした背景の中で、ちよだコミュニティラボでは、千代田での新しいコミュニティ活動とは何かについて、区民と対話を重ねていきました。活動を進めていく中で、千代田の中には、多様な人々のつながりがあることもわかり、新しい人とこれらのコミュニティとの接点をつくること、コミュニティとコミュニティをつなぐ活動に取組んできました。
例えば、コミュニティ活動を知ってもらうために、町会長や活動している人の思いを紹介する冊子の作成や、サイト等での多様なコミュニティ活動の紹介を行い、千代田にある「地域のコミュニティ」を見える形にしています。
また、かつては、その土地に住めば誰もが町会に入りつながることができていましたが、今は、つながり方に対する価値観も変化してきています。なんとなく名前と顔がわかり挨拶できるようなつながり方が望まれており、お互いのことを尊重しながら、自分のできることを協力するといった新しい関わり方が求められています。
コミュニティとコミュニティをつなぐ活動としては、年に一回の交流会をこれまで実施してきましたが、さらに踏み込んで、活動している人同士で何かを一緒にできたらと、関さんや金子さん、井上さんと言った区民の方がリーダーシップを取り「ちよだ文化祭」の取り組みも始まっています。
関真弓さんのお話
関真弓さんからは、自己紹介も兼ねて、NPO都市とまちづくり研究会の活動、関さん自身が取り組んでいる町会活動や新しい人と地域をつなぐ取組みなどをご紹介いただきました。
「NPO都市とまちづくり研究会」は、「安全で快適な個性ある都市住宅の供給と暮らしやすい地域コミュニティの構築と再生」をめざして、「ひと」と「ひと」の関係を大切にする住まい・まちづくりに取り組んでいる団体です。
バブル崩壊後、神田は人通りが減り、夜は人のいないまちになる一方で、地域のお祭りを支えるのは、そこに住み続けていた住民の方々でした。神田を人が住み続けられるまちにしたいと、マンションにお住まいの方と地域をつなぐ活動もしています。
所属する東松下町町会では、町会が持つ「まちを守り続けてきた誇り」を尊重しつつも、新しい住民も参加しやすいように変えていきました。例えば、町内にこれまで住んでいる人の4倍以上の人が住む大規模マンションが建設された際には、強制的な町会加入を求めるのではなく、町会の楽しさを伝えること、参加したくなるようなイベントを開催していくことに取り組んできました。このような取組みから交流を深め「よかったら町会に入りませんか」と自然な形で参加を促す仕組みをつくってきています。
パネルトーク
続けて、関さんと事務局の広石で、「コミュニティの新しい関わり方を広げるには?」「コミュニティのあり方の変化」について、パネルトークを行いました。
町会活動などに新しい人の関りを増やすには
- そのコミュニティに「入りたくなる」ことをどうプロデュースしていくかのが重要。町会に関わったことがない人に、まずは知ってもらうことが大事となる。その場合、イベントの告知だけでなく、町会活動の報告もしていくことで、活動のイメージが共有できる。
- 町会のイベントは、初めて参加すると誰に声をかけてよいかわからないことが多い。町会の内部にいるとその感覚がわからないかもしれないので、「受付をつくる」「声をかける」といった工夫が必要。
- マンションが建設されると、今まで住んでいる人よりも多くの人がいきなり住民となり、町会としてどう受け入れるか、議決権をどうするかは難しい課題であり、千代田区ならではの課題といえる。
コミュニティのあり方の変化
- コミュニティの意味が変化し、かつてのように時間をかけて一体感を醸成する関係づくりが難しくなってきた。また、住むだけで地域の一員と認識される時代ではなくなった現代では、地域への参加も強制ではなく個人の関心に基づくものとなり、新しい人々との関わりをどのように築くかが重要なポイント。
- コロナ禍でコミュニティの考えががらりと変わった。東松下町会では、コロナ禍でもできるラジオ体操や写真コンテストなどを工夫して取り組んできた。こうした新しい工夫によって、新しい人も関わりやすくなることがわかってきた。また、神田藍の会の活動を町会の中にも取り入れている。こうした違う視点が入ることで、新しい関わりもできている。
- 神田公園地区でも、コロナで子どもたちが体を動かしたり大声を出す体験できなくてかわいそうと、神田プロレスと一緒にイベントを行った。子どもたちのためにという思いを分かち合えると関りが持てるのではないか。
- 地域に子どもたちが増えたことで夏のラジオ体操が復活すると、高齢者の方も参加してくれるようになった。新しい人が増えることは、これまで住んでいた人にも良い影響を与えるともいえる。
- 昔は当たり前に共有できていたものが、意識して共有していくことが大事と考える。
- 共有度をどう高めていくのかがコミュニティ形成に重要。町会などもイメージが共有できていくと、関わる人が増えていくのではないか。神田公園地区連合町会の「大好き神田」のHPではイベントレポートを発信している。
これからのコミュニティ、関わりづくりについて
- 町会としてはコアで支えてくれる人が欲しいが、新しい人はなかなかそこまでの関わりまでいかない。子どもたちに「地域って楽しいという記憶」を持ってもらうことで、将来的に地域の担い手になってもらえればと考える。
- 楽しかったという経験が大事。またやろうということになるのではないか。
- 運営側に回ると風景が変わり関わってみれば活動は楽しいが、負担なく関われる設計も課題。
- 新しい人が運営に関わる時に、慣れている人は指示なくてもさっとやってしまうので、新しい人が取り残されないようにすることも課題。
- 佐久間三丁目町会では、いきなり神田祭に参加するのは難しいので、最初は負担の小さなものから関わってもらい、慣れたころで大きい行事に関わるというステップバイステップを実践。
- ライフスタイルも価値観も多様な人が暮らす千代田区では、町会だけでなく複数のネットワークが重なり合い、どこかで接点を持つことが地域づくりの鍵となる。
- 東松下町町会では、地震による停電の時に、青年部の人が高齢者を見守ったり、交通整理を行った。その際に、日常からのコミュニケーションが大事だと改めて感じた
- みんながみんな強固につながっていなくても、誰に聞けばよいかがわかるくらいなレベルでは繋がることができると災害があった時に安心となる。
関さんから、これまでお仕事としても、地域の住民としてもコミュニティづくりやまちづくりに取り組んできたからこそのお話を聞くことができ、これからのコミュニティづくりにおけるヒントがたくさんありました。
※東松下町の取り組みは、パネル展示でも紹介しています。
※関さんの活動の詳細は以下よりご覧ください
■NPO都市住宅とまちづくり研究会
https://chiyolab.jp/archives/4465
■東松下町町会HP
https://higashimatsushitacho.tokyo/