マンション・コミュニティ・ゼミより

コミュニティの基礎知識(4)~ コミュニティへの第一歩としての対話

現代の都心で、マンションで、コミュニティをつくるとは、どういうことで、どんな意味があるのでしょうか? また、人のつながりをつくり、コミュニティを醸成していくには、どのような取組が必要になるのでしょうか?

コミュニティづくりのヒントとしていただくために、マンション・コミュニティ・ゼミでの内容をもとに、基本的な考え方を紹介していきます。

同じ町に住んでいても、お互いのことを知らなければ、コミュニティとはなりません。
コミュニティは、お互いを知ることから始まります。そして、お互いのことを知るには、先ずそれぞれが自分のことを話す必要があります。つまり、コミュニティはお互いに「自己開示」することから始まります。

ただし、プライバシーを大切にする現代社会では、以前の共同体のように、いきなり自分のことを全部周りの人にさらけ出すのは無理です。

先ず第一歩として考えられるのは、自分の関心あるテーマに対して、自分が言ってもいいと思える範囲のことを話し、他の人の意見を聴くことから始まります。

日頃から気になっていることのテーマで集まり、集まった人同士の中でやりとりを起こし、そこから自分の思いや求めていること、経験、できることを出し合うような場があれば、お互いを知り、さらに求めていることとできることを結びつけることができるでしょう。そのような「対話の場」が、コミュニティづくりの第一歩になります。

この話し合いに必要なのは、対話と議論の違いをしっかり踏まえて話し合うことです。

議論は、自分の立場等に基づき、答を出すための話し合いです。出した答には責任も発生します。そうすると、発言に慎重になるか、答を出すための意見には自分の利害も生じるため、意見の違いは対立に陥りやすくなります。通常の会議は、議論の場であることが多いのです。

それに対して、対話とは、テーマについて、ルールのもとに、お互いの考えを聴きあうこと場です。議論は答を出すことが目的ですが、対話は「相互理解」を深めることが最大の目的です。テーマについて、それぞれの考えを聴くことで知り、自分の考えは何かを考えたり、これまでの自分の視点にはなかった見方に気づくことが目的です。

知らない人と話し合うのは、なんとなく嫌だ、面倒そうと思ってしまうのは、議論の場では、自分と違う人の意見を否定する人もいるからでしょう。ですから、対話の場では、目的(相互理解のため)、テーマ、進め方、参加者が守るルール(お互いを否定しない等)など、場の前提条件を明確にし、それを守るよう整えることが鍵となります。その前提を整え、それないように進めるのが対話のファシリテーターの役割となります。

同じ意見の人同士だと話しやすいのですが、話は深まりません。しかし、違う考えの人がいるとことで、自分では気づかなかった視点や同じ状況に異なる文脈があると気づくことができ、状況を多面的に理解でき、話が深まることができることで、多様な人の関係性の基盤ができます。

そして、お互いのことを理解し合い、お互いの存在を認めることができ、さらに、共通の課題を持つ人がいること、それぞれの目指すゴールをお互いに受け入れあっていければ、コミュニティに近づいていきます。

もちろん一度の対話で一気にコミュニティになることは難しいのですが、対話を重ねていくことが相互理解を深め、最初は全くの他人だった人にも共通点が見えてきたり、違う意見だがそれぞれには理由があることをお互いに理解しあえれば、関係性ができていき、それがコミュニティへとつながっていきます。

対話は、全く関係ない他人が、自己開示しあうことで関係をつくっていくための貴重なステップの場です。

千代田区でも、対話を通して地域のつながりづくりを始める活動が色々と始まっています。

その一つ、「ちよとも」は、区内に友達をつくりたい!と考えている人たちが、ワールドカフェという対話の手法を使い、地域で課題となっているテーマについて対話し、お互いにつながっていこうという活動です。

(写真は、ちよともファシリテーター講座の様子)