【レポート】基礎編5 町をシェアしよう シェアリング@千代田

新しく住み始めた人も、以前から住む人も、町の中に住む以上、誰しもが町をシェアしています。しかし、普段、町をシェアしていることを自覚する機会は少ないのではないでしょうか。

町には歴史があれば、様々な活動も行われていれば、様々な店や会社があり、が居ます。こうした町の要素を知り、シェアすることで、暮らしをどのように豊かにできるのか。

今回は、千代田区で、町の大きな要素の一つである町会の運営に関わるお二人と、町を深く知るイベントなどを開催している方お一人をゲストにお招きし、お話を伺いました。

1.神田のまちの過去・現在・未来

1人目のゲストは、司町一丁目町会 会長で、神田公園地区連合町会 会長でもある坂井 重正さんです。

千代田区の神田地区に長く住んでいらっしゃいます。神田は元々、職人のまちで、昔は、職人さんの仕事場や事業所やお店ばかりだった時代もあります。しかし、最近では、お店も少なくなり、マンションが次々に建つようになりました。住む人も増えてはいますが、その中で町会に加入する割合は減っています。

そのような状況の中、坂井さんをはじめとする、昔からお住まいの方々は、町を守るため、神田祭などのお祭りの運営や、防災訓練縁日盆踊り雪まつりなど様々な取組みを行ってらっしゃいます。

また、昨年からは、地域コミュニティ醸成支援事業の一環として「神田すみこなしガイドブック」を制作しています。神田エリアには、老舗のお店歴史ある場所発祥の地など魅力的な場所が多く、お店を出している人も個性的な人が多い神田エリアが、より住みやすくなるための情報が掲載されています。

そうした情報のシェアを通じて、まちの様々な要素をシェアし、より新しく住むようになった人にもまちに関わってもらいながら、住みやすい神田にしていくことを目指しています。

2.四番町の変化と「四番町 防災とまちの歴史」

2人目のゲストは、四番町町会 会長の杉田 宗一さんです。

杉田さんは、千代田区の麹町地区に長く住んでいらっしゃいます。麹町地区は、神田地区とは違って、地域との結びつきが難しく、昔からお住まいの人がほとんどいなくなってしまった時期もありました。

今は、分譲マンションが増えて住民は増えていますが、オートロックのため居住者以外は入れない状況で、町会の案内がほとんどできないのが悩みどころです。町会のチラシを持っていってもデジタルサイネージしか受け付けないマンションがあったり、新聞折込しようにも新聞をとっている家庭が少なくなっている現状で地域の情報を、マンションにお住まいの方へ届けるのが難しい状況です。

いくつかのマンション内には、地域や町会の情報を配架できる専用のスタンドを置いてもらうようにしました。スタンドに設置されたチラシがなくなっていることもあるそうで、マンションにお住まいの方も地域の情報に興味があることがわかります。

また、マンションにお住まいの方へ声掛け自体もできないと、孤独死などのリスクもあり、管理会社含めお願いしているものの、なかなか難しいとのことです。

そんなマンションにお住まいの方にも町会に感心を持って頂くことと、防災の意識を高めることを目的に制作したのが冊子「四番町 防災とまちの歴史」です。

四番町のまちなかで防災する方法や、防災に関する機材や道具の場所四番町の歴史などについて掲載しています。制作に当たっては、町会の役員に新聞社勤務の方や町会内にあるビジュアルアーツというデザイン専門学校の協力も得てました。正に、まちの人材のシェアによってできた冊子です。

今後、地域にファミリ層が増えたことや、ITなどのツールの進化も目覚ましいということで、こうした時代のニーズにあった冊子へと改訂する予定です。また、これを機に紙以外にも、HPSNSなどでの情報伝達を模索していくとのことです。

3.地域活動実践者紹介 「CCxTOKYO」

3人目のゲストはCCxTOKYOの渡辺 美鈴さんです。

CCxTOKYO千代田区を遊ぶ会といえます。多様な千代田区の資源や各種グループとの連携を活かし、「楽しむ」をキーワードに、千代田区の魅力を発信することを通じて、地域や世代を超えて交流を深めるべく、活動を行ってきました。

活動のきっかけは、10年ほど前に区民としてもっと千代田区のことを知りたい、地元と接する機会を増やしたいと思われたことでした。まずは地域のボランティア活動から始め、その後、自らCC×TOKYOを立ち上げ、様々なイベントなどを開催してきました。

CC×TOKYOの活動の特徴は、住んでいる人だからこその千代田区の魅力をストーリーをもって伝えることです。

単なるガイドや地域情報発信との違いはそこです。住んでいる人だからこそ、人がガイドするからこその体験を参加者の人と一緒にすることに注力しています。

例えば、神田須田町の三味線と長唄を教えるグループと一緒に銀座のお稲荷様を回るツアーや、銀座の松本楼に行きシェフにお話を聴く会、時代劇をテーマにし、神田神保町を巡る会などを行っています。開催する度に人脈も広がり新しい情報新しい可能性が生まれています。

「半蔵門で月見の宴」という名前で、国立劇場で三味線を楽しんだ後、十七夜に満月を楽しむイベントを開催する予定です。これからも更に千代田区の魅力的な場所を開拓していく予定だそうです。

4.ワーク「町のことで知りたいこと、伝えたいことを考えよう」

ワークでは、「まちのことで知りたいこと、伝えたいこと」「そのためにどんな活動があれば参加したいか」について、話し合いました。

千代田区の町について知りたいという思いのある人はたくさんいますが、新しくお住まいになった方や、在勤の人などにとっては、どうやってまちのことを知ればよいのかがわからないというのが実状です。伝えたい人、知りたい人をつながぐ仕組みが必要とされています。

また、一方で、まちの防災情報などは、在住の人だけでなく、在勤の人とも共有していかないといけないのではないかといった意見も挙げられました。

【挙げられた意見】

  • まちのことについて、20~30代の若い人も興味はあるが、知りたくても誰に聞けばよいか、どこに行けばよいかわからないことが多い
  • まちで活動している人は集客に困っており、また、地域に住んでいる人は自分たちにあうイベントの情報を見つけられずにいるので、両者をつなげる仕組みをつくれないか
  • 人を介した情報は、単なる情報に終わらず「ストーリー」があり、それをみんなで共有すること自体が楽しい
  • 戦前のお話を知っている高齢者の方々のお話は貴重だが、そうしたお話を聞く場がない、記録が残されていないのが課題ではないか
  • 在勤の人にも防災についての情報共有は必要ではないか。
  • 住んでいる人に情報を行き渡らせるために紙だけでなくウェブなどを使った多様なメディアを検討する必要がある
  • 歴史ある町の情報を、政治だけでなく、民衆・芸能・産業などの多様な切り口で海外への発信してみたい。