千代田区で活動を行うアーバニスト:育休中ママが千代田区で自分のやりたいことを実践していった方法

今回は千代田区での活動を行っている方のお話を聞き、千代田区でよりよい地域と社会のために何かしたいと考える方や地域との関わりを持ちたいと考える方に向けて、「千代田こどもの芸術祭」を開催されている村上さんについて、千代田区での地域活動を始めるにあたってのきっかけや活動をしてみて感じたことをお話していただきました。

村上沙織さんのプロフィール
  • 三児のお母さんで、教師の仕事の育休中に千代田区での「就学準備教室りりーふ」と「千代田こどもの芸術祭」のイベントを主催されています。
  • 就学準備教室りりーふ

    小1プロブレム(保育園・幼稚園から小学校に上がる際に、新たな集団生活の環境に慣れないことで、教師の話が聞けなかったり、授業中に歩き回ったりしてしまうこと)の解消をモットーに、就学前の4-6歳の子どもを対象とした小学校の授業体験教室を自身の育休時である2016年に立ち上げました。(http://relief.wp.xdomain.jp/

  • 千代田こどもの芸術祭

    コロナ禍で学校行事などのイベントが少なくなってしまった子どもたちに体験の場とその機会をつくるため、2021年に立ち上げました。アートとお祭りを融合させた「子ども縁日」やアートと自然をテーマに企業協賛で行われた「番町焚き火アートナイト」、神田にある稲荷湯で「お風呂コンサート」を行うなど地域のスペースを活用しながら、地域の方とのつながりを増やす活動に力を入れていらっしゃいます。

    http://relief.wp.xdomain.jp/kodomono/

就学準備教室りりーふでの村上さん

就学準備教室りりーふでの村上さん

イベント開始エピソード

始めに村上さんが「就学準備教室りりーふ」と「千代田こどもの芸術祭」を始めようと思ったきっかけについてお聞きしました。

育休を取って、地域で過ごす時間が増えたことで地域とのつながりの薄さを実感した村上さん。「就学準備教室りりーふ」開催のきっかけにはこのような村上さんの思いがあったといいます。

はじめは自分の普段の仕事を活かしながら、何か地域でイベントができないかと考えていて、未就学児向けの小学校体験教室イベントを区民館でやろう、となったのがきっかけでした。

村上さんは育休中にも子どもたちと接する機会が欲しい、職場復帰までのお仕事へのブランクを少しでも埋めたい、という思いから子どもたちと関わることができるイベントを始められました。

その次に始めたのが「千代田こどもの芸術祭」でした。これはコロナ禍で学校行事が減ってしまったこどもたちと接する中で、もっと体験の場をつくりたいと村上さんが考え、発足したイベントでした。そんな村上さんの思いが実際の活動になったのは村上さんの夫である史郎さんの言葉がきっかけでした。

イベントの内容自体は決まっていなかったものの、子どもたちへ何かしたいという思いを持っていた村上さんと、文化芸術というツールを持っていた史郎さんの組み合わせで、千代田区で新しい取り組みが始まっていきました。

千代田こどもの芸術祭というイベントを行って感じた活動の需要の高さ

インタビューで村上さんの行われているイベントの運営についてお話を伺っていくと、村上さんのイベントが地域の人たちにどれほど求められているのかが分かってきました。

始めは参加人数が少なかったんですけど、口コミとかで活動が広まっていったり、参加される方も単発で参加される方よりも、1回来られると定着して次もその次も来られる方が多くて、需要って結構あるんだなっていうのを感じました。

3月イベントの予約が一月ごろにあったんですが、それが一瞬で埋まったんですよ。やっぱみんな求めてるよね~となって、夏もしよう!ということを2月ぐらいに決めました。なので、2022年は3月と8月でこども縁日を2回開催することにしました。

実際に私もスタッフとして参加した2022年夏の「こども縁日」のイベントでは、どの時間帯であっても親子連れが会場に訪れており、縁日の終了時間ぎりぎりまでお店ではこどもたちが遊んでいました。また、浴衣などの特別な衣装を着て来られるお子さんが参加者に多かったことからも、「こども縁日」をとても楽しみに来られている参加者の方が多いことを感じました。

そして、村上さんたちは、イベントをただ開催するだけではなく、イベントのテーマとこどもたちの参加方法にも工夫をしています。

イベントのテーマ
(千代田こどもの芸術祭は)こどもの体験・表現・創造というこどもたちのアクティブな部分を大事にしていくというのが1番の主旨でそこは絶対に崩せません。そういうこどもたちの場づくりをしていくというのがあります。でも、それをやるためのプロセスとして私たちが大事にしているのがいかに本気の大人がそこに参画しているか、です。

こどもたちのイベント参加方法について
(こども縁日は)こどもをいかに参画させるか、で「こどもプランナー」という一緒に準備を進めるこどもたちを募っていて、これはこども縁日には外せないポイントです。長い期間で参加するには、親御さんからの理解や送迎などの大人のスケジュールが絡んできます。でも、当日のみ参加できてその時に体験ができるならちょっとやってみようかな、という人向けに当日のみの「キャスト」という役割でこどもが活躍できる場を用意しました。そして、純粋に遊びに来る人を「ゲスト」っていう風に分けて、3つのパターンを設けています。

就学準備教室りりーふでの村上さん

村上さんは、「こどもの体験・表現・創造」というイベントテーマを掲げ、そのような場づくりのためにどれだけ「本気の大人の参画」ができるかというプロセスが重要になっていると言います。イベントへ本気の大人が参画することで、こどもたちにそのような地域や社会のために活動できるアクティブさや考えの柔軟さを持った大人の良いところを吸収してほしいと村上さんは考えています。

また、イベントへの参画方法に「こどもプランナー」「キャスト」「ゲスト」という3つを設け、より多くのこどもたちがイベントに深く参加できるような設計をつくりました。この工夫によってそのご家庭やお子さんごとが無理のない範囲でイベントに一番深く参加できるシステムがつくられています。
そして、このようなテーマや工夫を設けることで、子どもも大人も本気でイベントに参加し、刺激されあうという場をつくりだしていこうとしています。

さらに、村上さんは「こどもプランナー」のように子どもたちがスタッフとしてイベントに深く関わった方の中から、保護者もプランナーとして参加したいという人があらわれたり、回を重ねていくごとにそのような積極的な方が参画してくれるということが定着するのではないかと期待していたといいます。
しかし、村上さんが持っていた当初の期待とは裏腹に、こどもの保護者などの大人の協力者が多く参加してもらうことには大きな壁も感じているようでした。

イベント参加者と共有したい思い

こども縁日はPTAのような会でもないし、自主的にやってもいいな、という人に集まってもらいたいと思っていて、こども縁日も回を重ねていけばそのようなことが定着していくんじゃないか、という期待を持っていました。でも、大人でプランナーとして、参加するという方はあまり多くなくて…千代田区の方は教育熱心な方も多いし、ご自身のお子さんだけじゃなくて区とか全体をもうちょっと見る人が多いかな、と思ったんだけど、そこが案外甘かったですね

他にもイベントの主旨がうまく伝わっていなかったり、参加された方とのイベントにかける思いのすれちがいを感じたりすることもあったといいます。活動を続けていく中で、どのようなアプローチをするにしても、そういったことは少なからずでてきてしまうということに気づいた村上さんは、まず自分たちや趣旨に賛同してくれる仲間たちが一緒に楽しめる輪を広げていくことにより重きを置くようになっていきました。

いろいろな人が来ても楽しめるイベントにするにはまず自分から楽しむ!

一人一人様々なイベントへの考えや思いがある参加者の方とイベントを行っていくうえで、村上さんは「自分がやりたい」という思いを大事にしているといいます。

イベントをしてあげたい、って思ってやるとたぶんメンタル的に持たないと思う。何かアンチ系が来た時に、「自分がやりたい」なら何か言われたとしても続けられる。だから、これから何かをされる方は「自分がやりたい」「これをやる必要がある」と思うことがあれば、今すぐにでも始めたら良いことだと思うし、そう思ったときがベストなタイミングだと思います。自分がどこまでやりたいかという規模も自分でコントロールしても良いと思うんですよね。周りから「もっとやって!」と言われても、「やらないです」と言っても良いと思うし、そこは気負わなくて良いと思う。

村上さんのお話を伺うと、運営の軸として自分のやりたいことがあって、それを「自分たち」という協力者や参加者とともに盛り上げていくことで地域の人とのつながりを増やしていくことを通して、地域の人からのイベントへの需要と村上さん自身のイベント開催のモチベーションも高まっているようでした。

「ウケよう」とは思っていません。来た人がどんな風に思うかはわからないけど、とりあえず自分たちが「これは楽しいんだ!」という自信や思いを持てるイベントをまずやってみるっていう感じです。

イベントについて村上さんは、まずは自身のイベントを「楽しい」と自信をもって言えるようにすることが大事だと考えていることが分かりました。
そして、その村上さんの気持ちがイベントで一緒に準備をしたり、作業を行うスタッフの「このイベントに参加して様々な地域の人との関係や関わりを持てたし、参加して楽しかった!」という気持ちにつながります。そして、参加者にもそのスタッフの表情や雰囲気は伝わります。

実際に、私がこども縁日に参加した際も、スタッフみんなでお店に使う備品をワイワイ準備していると、こどもたちが「何してるの~?」と興味深々で話しかけてくれたことがあります。村上さんからスタッフ→こども→親御さん→会場の人→地域の人、というように、誰かの「楽しい」がまた違う誰かに伝播していくきっかけを村上さんのイベントは担っていると思いました。

(インタビュー ちよだコミュニティラボ インターンKさん)
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