【レポート】地域活動ファーストステップ講座②~本を通したコミュニケーションをもっと楽しもう

2022年3月2日、オンラインにて地域ファースト・ステップ講座「本を通したコミュニケーションをもっと楽しもう!」を開催しました。千代田区に在住・在勤の方、読書というテーマに興味を持たれた方など25名の方にご参加いただきました。

本講座は、人と人がつながり、知り合う“きっかけ”としての「本」の可能性に注目し、「本」をコミュニケーションのきっかけとして地域活動に活かす方法について考えることを目的としています。

① 本を通したコミュニケーションを楽しもう!

まず初めに、講師の広石より本を使った交流の活かし方についてお話がありました。

1つは「人と人は、つながるためにはつながれない」ため何を共有できるのかが重要で、つながりを作るための仲立ち役として本があり、本を使った交流の方法として読書会があること。また、地域の人と問題意識を共有したい・新しい活動を知ってほしい場合は活動テーマについての読書会、お互いをもっと知りたい・グループの交流を活性化したい場合は自分の好きな本を紹介しあう読書会など、目的に応じてテーマを設けて読書会を行うことで本を通じてつながりを作れるというお話がありました。

②ゲストトーク「共読を楽しもう!~つながる場としての読書会の可能性」

次に様々な公共施設・市民利用施設で「共読」についての講座やワークショップを開催してきたご経験を持つ千代田図書館サービスプロデューサーの坪内一さんより、本を通じたつながりの魅力、地域の中で行う読書会の意味についてお話しいただきました。

読書と地域のつながりの一つとして「まちライブラリー」のご紹介がありました。本を通して人と人とが出会うこと、人がつながる場所として作られているこの場も共読の一つの形です。

またもう一つのつながる「場」として読書会について、普通の読書会とは違うやり方をされている坪内さんの3つのポリシーのお話がありました。1つは本を通じて人を知ることを重視されている点。通常は輪読形式ですが、坪内さんの場合は紹介したい本を持ち寄り紹介することで議論スタート、本を読んでいない方も参加可能で感じたことをその場で自由に発言頂く形式とのことです。2つ目は会費もノルマもないいつでも気軽に寄り添える開かれたサロンであること。3つ目は「あそこに行けば誰かと会える・話ができる」場作りとして、読書会・懇親会の場所を固定すること。この3つのポリシーにより緩やかな繋がりによる学びのサードプレイスを目指されているそうです。

最後に、読書活動で大切に考えていらっしゃることについてのお話をいただきました。①書を捨てよ、街に出よう、②異質性と多様性が持続可能性を生む、③「PCR検査」と「未定調和」を大切に、といった坪内さん独自のワードを用い、人とつながるための工夫や孤立させないコミュニティ作りや活動の継続のコツについてご紹介いただきました。

③千代田で広げたい本を通したコミュニケーションとは?

最後は参加者の方から質問を頂き、そこにお答えする形で進行しました。

子どもの読書離れについてのご質問には、「親の読書との関係が重要で、本を読ませようとするではなく、親が本に親しむこと、本が自然にあることが大事」というお話を頂きました。
また、活動をする際に坪内さんのような人がいない場合はどうしたらよいのかというご質問には、「まず自分がそうなってみることが大切。色んな人に声かけてみて、来てくれたら嬉しいし来てくれなくても大丈夫。役割が重荷になると大変なので気楽にやってみましょう」という後押しいただくようなご回答をいただきました。

③参加者の声

参加者の方からは以下のような気付きや今後に向けての声を頂きました。

○読書会について気付きを得られた

  • 本を読むより人に会って話を聞く方が大事だというのは、まさにこのイベントがそうだなと思いました。本を読んでいるだけでは伝わってこない面白いお話が色々聞けて嬉しいです。
  •  読書会は、本だけでなく、人との出会いの場でもあるのですね。
  •  坪内さんご自身が楽しまれているというのも、続ける秘訣の一つかと思います。毎回新しい人がいる、ゲストにも期待感があるなど、とても新鮮に聞きました。
  •  本を通じて人と関わる場について、様々なバリエーションがあるのを知ることができたのは収穫でした。読書について「個人の営み」「おとなしい内向きな人の趣味」と思っている人は実際少なくないと思われるので、今回お話しされていたような読書の効用がこれからもっとたくさんの人に伝わるといいなと思いました。
  •  ゆるやかなつながりによる学びのサードプレイスを目指す、というのは、まさに自分も思う地域活動です。
  •  お二人の取組みへのスタンス素敵です。働く、ということの意味って、広くて深いなあと改めて思いました。
  •  読書会や懇親会の場所を固定することで誰かに会える場を作るという話を聞いて、行きつけのバーのような空間なのかなと思いました。あそこに行けばあのマスターと話せる!みたいな。サードプレイスとしての読書会という考え方もあるのですね。

○行動を起こしてみたい

  • 私自身、読書との付き合いも長いだけで、深くなることはできずにおりますが、今回お話を聞いてその可能性を実感しました。”読書は他者との交際である”この言葉を体験すべく、まちライブラリーを訪ねたりしてみたいです。
  •  個人で大学の友人と特定の作品を扱って意見共有する「読書会」を主催しているのですが、どういうふうに運営していくか手探り状態だったので、事例の紹介や地域活動に活用する際の根底的な理念を知ることができ、参考になりました。そういったコミュニティ目的の読書会にも行ってみたいなと思います。
  •  幼い頃、休みの度に祖父の家で従兄と本をむさぼり読んでいたこと、中学の頃には親の本を物色していたことが、懐かしく思い出されました。本が生活の中に何気なくあったのですね。本を通して人とであう居場所、私も参加したいです。地域で活動する際にヒントになることも、多かったです。有意義な時間でした。
  •  共読とは必ずしも一緒に本を読むことだけではなく、様々なコミニュケーションがとれることを知りました。ご紹介いただきましたブックハウスカフェを訪ねてみたいと思います。読書は「人は人によってこそ学び成長できる」ということを教えてくれる…大変興味深い言葉です。本と人とのつながりに関心が深まりました。

○その他の感想

  • 本、読者、著者、思想などを掘り下げる講座かな?と思っていました。しかし人と人の自然な集いが何よりとの坪内先生のお話でした。それなら媒体として「本」以外も可能性があるのかと思いました。
  • 「読書は他者との交際である」私は住まいの近くで「大人の読書会」に参加することがあります。高齢の男性たちが、嬉々として長々と弁じていらっしゃるお姿を想い浮かべました。
  •  「異質性と多様性が持続可能性を生む」同質ばかり集まるとギスギスする。固定観念を排除する。偶然の必然を大切に。ほんの少し実感もあり、まだまだ腑に落ちるまでいかず、今年の課題といたします。
  • 「発散と収束」による満足感の演出!「未定調和」コーディネートのコツの糸口を教えていただきました。