千代田区のコミュニティ活動の紹介
千代田区に埋もれた戦後のアメリカ生活を発掘する:パレスハイツ、ジェファーソンハイツ、リンカーンセンターを事例にして
上智大学外国語学部英語学科(教授)小塩和人さん
千代田区に埋もれた戦後のアメリカ生活を発掘する:パレスハイツ、ジェファーソンハイツ、リンカーンセンターを事例にして
1. 本事業の目的
本事業がもつ第一の目的は、千代田区に位置する上智大学で北米研究を専攻する学生たちが、地元に目を向け<忘れ去られた日米関係>について「過去を発掘する」経験をすることで、自らが通う大学と地域をより身近なものとして捉え直す契機をつくることである。さらに第二の目的として、大学生が発掘した歴史を地域の人々に披瀝することで、大学と地域との結びつきを深める契機をつくることである。
2. 本事業の対象
学生が発掘するのは、いまから75年前に建てられた住宅地区である。第二次大戦後の千代田区には、隼町に「パレスハイツ」(図1)永田町に「ジェファーソンハイツ」(図2)霞ヶ関に「リンカーンセンター」と(図3)呼ばれる住宅地区があった。しかし、今では跡形もなく、人々の記憶からも消え去って久しい。それもそのはずで、現在はそれぞれ国立劇場、衆議院議長と参議院議長の公邸、国土交通省第3合同庁舎)が建っており、戦後日本を占領した在日米軍が接収して、二百数十に及ぶ宿舎群を建設したことは、忘却の彼方に霞んでいる。
3. 本事業の実施内容
戦後日本を占領した在日米軍の軍人軍属およびその家族が居住する目的で建築された「米軍住宅」は、我が国では「米軍ハウス」、「外人住宅」などとも呼ぶが、アメリカ合衆国では Dependent(s) House すなわち「扶養家族住宅」と呼んでいる。こうした生活空間に接した戦後日本人は、圧倒的なアメリカ生活文化に影響を受け、高度経済成長へと疾走していくのである。その実像を文献・映像資料から歴史的に再構成していく作業を行ない、2021年10月30日に南山大学で行われた研究交流会で発表し、翌年3~5月まで上智大学図書館・6号館で歴史展示を行っている。