【開催レポート】ちょうどいい関係のマンション・コミュニティをデザインしよう(マンションコミュニティ・ゼミ)

2021年9月22日(水)に、Zoomによるオンラインで、マンションコミュニティ・ゼミ「“ちょうどいい関係”のマンション・コミュニティをデザインしよう」を開催しました。

日ごろ深く関わるわけではないが、困った時に声かけ合えるようなマンションコミュニティとはどのようなものか、コミュニティデザインの手法をヒントに参加者の皆さんと一緒に考え、防災やコミュニティ参加に対する住民アンケートの活用法などもご紹介しました。

当日は、区内のマンション在住の方を中心に13人の方に参加いただきました。

[コミュニティ・デザインの基礎]つながりや関係性をデザインするとは?

これまでちよだコミュニティラボでは、「顔の見える関係をどう広げていくのか」をテーマに、地域活動をする方を紹介したり、コミュニティ同士のつながりや交流を作り、大きなネットワークとして広げていくといったことに取り組んできました。

その前提となっているのは、「地域に住んでいるから地域コミュニティに属する」「マンションに住んでいるからマンション・コミュニティに属するという」これまでのコミュニティの考えを共有することが難しいということです。千代田区では9割以上がマンションなどの共同住宅に住んでいますが、利便性や住み心地でそのマンションが選ばれるのが普通です。そこにいきなり「そこに住んでいるからつながりましょう」というのは当然難しくなってきます。また、普通に都心でマンションに生活をしている中では、「自分の困りごとを他者に知られたくない」という心理や、時間的な余裕のなさ、地域や区政が自分の知らないところで決められているように思えてしまうこと、地域の方との接点がほとんどないといったことより、地域に目を向けたり、他者とつながっていく機会はほとんどないと考えられます。

一方で、これまでプロジェクトを実施していく中で多くの区民は何らかのつながりを求めており、ある程度自分なりのつながりを持っているということがわかってきました。

そういった背景や前提を踏まえ、講師の広石から、現代のコミュニティづくりにおいてポイントとなるのが、個人と個人が出会い、顔が見える関係を作っていくことであるとされ、共に共感できるものからその思いを共有し、何かを一緒に体験していくことで信頼を積み重ね、つながりを作っていくというのが現実的な現代における「コミュニティづくり」ではないかと説明がありました。

図表 千代田区におけるコミュニティを考える前提

また、今回のテーマにおける「ちょうどいい関係」を考えるヒントとして、7~8月に実施したアンケートの速報データより、マンションにお住まいの方は、「挨拶をする程度の交流」はしており、日常的な交流やイベントといった交流は求めていないが、困った時助け合える関係、災害などの時に協力できる関係は作りたいといった意向があることが紹介されました。この結果からも、マンションにおいて「交流を全くしたくない」という層はマジョリティでないということがわかります。

さらに、コミュニティ・デザインの考えからのヒントとして、目的志向(何か同じ目的や共感するものから関係を気付いていく)によるコミュニティづくりが現代的ではあるが、そういった経緯でコミュニティづくりを始めても、関係性を深めていけばいくほど、「ウチとソト」というものが生まれてしまい、この関係性がコミュニティの閉鎖性や強い帰属意識を生み、ある意味コミュニティの難しさとなっていく懸念もあることが紹介されました。ちょうどいい関係とは、何かをまずは共有してゆるくつながるところで留めておくことかもしれないといったこともヒントとして挙げられました。

これらのヒントより、改めてマンションにおけるコミュニティを考えるポイントとして、「完全につながること」を目指さなくてもマンション内で数人の顔見知りがいればよく、管理組合の役職の輪番制をうまく活用し、知り合いを増やす、マンションについて考える、または、地域とつながる機会としてはどうかという提案がありました。

さらに、コミュニティ醸成において「情報を共有する」ことの大切さにも言及されました。コミュニティ参加していない人にも、地域や管理組合の情報を提供し続けることが、「疎外感」をなくし、コミュニティに属しているという意識をもたらすのではないかということです。住んでいる地域の情報を欲しいという声は、これまでのヒアリングやアンケート調査でも見られています。その役割を管理組合などが担うことが可能性を作っていくと言えます。

図表 マンションコミュニティを考えるヒント

マンションのコミュニティに関する意見交換

講師からの講義を受けて、参加者同士で、マンションでの関係づくりについての意見交換を行いました。以下のような意見がありました。コミュニティのそもそもの考えが目からうろこだったといったような意見や、関わりづくりのヒント、情報共有の大切さなどに関する意見が散見されました。

【主な意見】

  • マンションは箱の中の関係、町会は地面でつながっている人の関係といった意味で、人と人が関わるきっかけは同じと考えられそうだ。役割を担うことで一員となっていくという話があったが、何か頼まれたらやってもいいと思っている人は意外といるのではないか。人に何かを頼むことを極度に心配している人もいるかもしれないが、ちょっと声をかけていくというところから始めるのもいいのではと感じた。
  • 「つながらなくてもいい」というところからの出発であると、何か気が楽になると感じた。
  • 濃くつながるのではなく、薄くつながるのが大事だということに気づいた。プライバシーを守りつつ、つながれたら。一方で、孤独死や孤立といったこともあるので、その辺りのケアも考えてもらいたい。
  • 一部が親しくなりすぎると入っていない人が疎外感を感じてしまうという話は、大変参考になりました。一方で、参加できるかどうかわからなくても、ここで○○をしています、こういう会がありますという情報が得られるのはうれしいと感じました。
  • 関わってほしくないと拒絶し続けていた人に対して、地域の民生委員がお手紙を出し続けたということがあった。結果として、その方が引っ越す際には、民生委員の方への感謝の言葉があったと聞いている。情報を出し続けるといったことの大切さの例であると思う。
  • 自分の調査では、千代田区の人は「地域活動をしたい」「地域に貢献したい」という人が多いという結果が出ています。可能性はあるのでは。
  • 情報発信が大事ということであれば、WEBやSNSなどでの情報共有も有効だと思います。
  • SNSなども大事だが、情報共有といった意味では、チラシの効果もあると思う。インターネット情報は自分で探しに行かなくてはならないが、「紙」には偶然の出会いといった可能性がある。
    ※マンションにおける広報誌スタンドの貸し出し(千代田区広報広聴課)や、千代田区社会福祉協議会でも、ボランティア情報ステーションの設置として、ボランティア情報のチラシ設置のためのスタンドの貸し出しもしています。 区のスタンド貸し出し事業について: https://chiyolab.jp/archives/9366

マンションのコミュニティづくりにおけるアンケート活用の可能性

最後に、マンションのコミュニティづくりのきっかけとしてのアンケートの活用について説明がありました。アンケートというと、「調査」と思われがちですが、アンケート自体が一つのコミュニケーションツールとしての可能性があります。アンケートで問われることで、その問題について考えるきっかけになったり、結果のフィードバックにより他者の存在や声を知るきっかけになります。
実際の実施については、大変さを感じることもあるのではといった意見もありましたので、事務局においても引き続きサポートをしていく予定です。

最後に、マンションのコミュニティづくりのきっかけとしてのアンケートの活用について説明がありました。アンケートというと、「調査」と思われがちですが、アンケート自体が一つのコミュニケーションツールとしての可能性があります。アンケートで問われることで、その問題について考えるきっかけになったり、結果のフィードバックにより他者の存在や声を知るきっかけになります。
実際の実施については、大変さを感じることもあるのではといった意見もありましたので、事務局においても引き続きサポートをしていく予定です。

【アンケートについての声】

  • アンケートは実施してみたい。何度もやりながら、関係者を増やしていきたい。
  • アンケートはきっかけとしていい取組だと思いました。でも、アンケートって、とても大変というようなイメージもあるかもしれません。アンケートづくりのための研修会や大学生のサポート(集計)があるとか、きっかけになるような取組があってもよいのではないか。

図表 マンション内のアンケート実施のヒント

【ゼミ参加者の声】

  • マンションごとに「ちょうどいい関係」の程度が違っていると思います。まず自分のマンションに住む人たちがちょうどいいと感じる関係を試行錯誤しながら探っていくしかないのだろうと思っています。
  • 価値観を押しつけない、というのが心に残った。また、参加する理由付けとして仕事を割り振るというのは有効だと思った
  • ギブアンドギブの考え、ゆるい関わり合いを望んでいることを理解しました。
  • アンケートをコミュニケーションツールとして活用するということについては大変参考になりました。
  • マンション・コミュニティを重荷に感じておりましたところ、肩の荷がスーっと降りたような気がしました。ウチに入ろうと肩肘張らなくても、ソトから、管理組合を眺めているのも、一つの知恵かな、と思えるようになった講義でした。
  • マンション管理組合がホームページやSNSを低価格で立ち上げ&運営できるサービスがあると良いのかなと思いました。
  • 講義がマンション住民としての自分の心のうちと、ピッタリ重なるものであり、その思いを言語化していただいたことで、さらに理解が深まりました。
  • マンション内で防災委員会を組織しました。当面、メールによる情報共有から初めて、簡単な防災イベントを何回か繰り返して行こうと思います。さらに近隣のマンションと防災をテーマに連携を取れるとつながりが広がりそうなのでトライしてみるつもりです。
  • マンション内の交流に関しては、館内の掲示物だけで留めるのではなく、登録者に情報が自動的に提供できる様にする為にもマンション管理組合並びに町内会等によるTwitterやFacebook等のSNSを活用した情報発信、マンション管理組合ホームページ上への一般公開が可能な書類の公開を行う事が住民の皆様が安心して生活できる事に繋がると思います。
  • 見返りを求めない挨拶、はぜひ行っていきたい。
  • 関係者に活動を意識して発信して、とにかく目立つようにして関係者に活動を認知して頂くことが重要であると思います。