【開催レポート】災害に強い、レジリエントなマンション・ライフを実現しよう(マンションコミュニティ・ゼミ)

2021年7月18日(日)と7月25日(日)に、マンションコミュニティ・ゼミ「災害に強い、レジリエントなマンション・ライフを実現しよう」を開催しました。

千代田区で災害が起きた時、マンション暮らしに何が起きうるのか、マンションでどう対応するのか、基礎から学ぶ+ミニ体験から、自分のリスクを具体的にイメージしてみること。そして、それを通して、日頃から備えておくこと、地域やマンションについて確認しておくこと、マンションで備える必要があることを理解し、災害に対する自分の暮らしのレジリエンス(しなやかな強さ、逆境から立ち直る力、災害にあっても対応できる力)を高めることを目指しています。

それぞれのテーマは、7月18日(日)の第1回が「災害時に何が起き、どんなコミュニケーションが必要になる?~基本を知り、ロールプレイを通して考えよう」、7月25日(日)の第2回が「日頃からマンションで、何を共有し、備えておけばいいのだろう?~「そなえるカルタ」をヒントに考えよう~」。それぞれ、区内在住のマンション居住者の方々を中心に約30名ずつの方々に、ご参加いただきました。

第1回「災害時に何が起き、どんなコミュニケーションが必要になる?~基本を知り、ロールプレイを通して考えよう」

第1回では、最初に、千代田区災害対策危機管理課の防災係長の宮原さんより「千代田区の災害対策の現状について」をテーマに、お話いただきました。

千代田区の災害対策の現状について

千代田区の地域特性として、夜間人口と昼間人口の差が大きいことがあります。夜間人口は約6.7万人、約3.8万世帯に対して、昼間人口は約85万人。事業所数は約3.1万で、夜間人口の約13倍の昼間人口となっています。帰宅困難者は約50万人に上ると予想されています。

ただ、区内全域が地区内残留地区(建物倒壊・火災の危険度が低い)になっているのも特徴で、建物の不燃化が進んでおり、広域的な避難を要さず、即座に避難しない方が安全な地域です。

そうした地域において、風水害や地震の被害がどのような状態になるか、その対策について話がありました。

風水害に関するハザードマップは千代田区にも神田川・荒川に関するハザードマップがあります。最新版は2021年8月に更新されました。

千代田区ホームページ – 風水害ハザードマップ
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/bosai/hazardmap/map.html

地震に関する災害時退避場所位置図も千代田区で出しています。

千代田区ホームページ – 災害時退避場所
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/bosai/kitaku/shien.html

最後に、災害時の情報収集についての説明もありました。

続いて、株式会社HITOTOWA  津村翔士さんより「災害に対するマンションの対応力とは?」 をテーマにお話頂きました。

災害に対するマンションの対応力とは?

まず、津村さんが所属される株式会社HITOTOWA の活動紹介をして頂きました。代表的なプロジェクトとして、およそ1万人規模の団地再生プロジェクト「まちにわ ひばりが丘」「まちのね浜甲子園」、1,000世帯のタワーマンション「西新宿CLASS in the forest」や「フロール新川崎」などがあります。

続いて、HITOTOWAの防災コンテンツについて紹介頂きました。「よき避難者ワークショップ」「マンション内避難生活シミュレーションゲーム」「防災設備ツアー」「防災マップづくり&まち歩きツアー」「非常食体験BBQ/料理教室」「防災おしゃべり会」「ディフェンス・アクション」「防災グッズ or ホームしりとりれーなど様々なコンテンツを全国各地のマンションで行われています。

プログラムを行う際に、参加者の方に必ず伝えているのは、行政も管理会社も皆さんを助けたいけれども助けられないという状況が発生するということ。そのため、しっかりと自分自身を自分で備え、また、マンションの住民同士で協力して対応することが必要となるということです。

また、こうした状況に備えマンション住民同士で話し合う場を作っていくことは必要ですが、そのきっかけづくりは容易ではありません。そのヒントとして、津村さんからは「まずは、どんなことに困ったのかを最初の話題にしてはどうか」というアドバイスがありました。災害後には、その地域みんなが同じ経験者なので、どういう点が困ったか、助かったのかを聞くのが有効とのことです。それは必ずしも地震でなくても大雨や台風などでもよく、そういう経験がなければ、3・11の東日本大震災の時の経験のシェアでもよいそうです。個々の人の防災意識に関係なく、経験を語ることから始め、これらの話し合いから、「準備していても困ることがある」という気づきをお互いにシェアすることで、そなえに対する意識が向上していきます。

その後、ミニ体験会として「マンション内避難生活ロールプレイ(体験版)」を行いました。

マンション内避難生活ロールプレイ(体験版)

まず、7月16日(金)15時 東京は最大震度6強の地震が起きた場合を想定して、
①あなたはどこで・なにをしていましたか?
②どんなことに困ったでしょうか?
について、考え手もらった後、全体で共有していきました。こうして具体的に想定をしてもらうことで、時間帯によって地震発生時、発生後の様相が異なることを認識して頂きました。

続いて、災害シミュレーション​として、上述のような状況で、個人の世帯の状況や備蓄の状況を、「世帯人数の違いがある」「備蓄の状況が2週間の備蓄がある、備蓄がほとんどない、親族が急に避難してきて蓄えた備蓄では足りない」等の具体的な状況を設定した上で、自分が理事長だったらマンションの共用備蓄品をどう配るかを考えてもらい、それを全体でシェアしました。
「管理費をみんな同様に払っているのだから、各家庭に同様に配り、その後、余裕のある人には拠出してもらうのがよいのか」「そのためには、日ごろのお付き合いも大事では」「何人住んでいるのかもわからないケースもある」「そもそもマンションにどんな備蓄があるかも知らなかった」
といった意見がでました。

その他、津村さんのお話から、在宅避難の中で、ゴミ、トイレ、排水管などの問題も発生し、自分だけでは対応できないことがあることもわかってきました。

ふりかえり

最後に、ふりかえりとして、「自分のマンションの災害への対応力を高めるには?」をテーマに参加者の方々に感想を発表していただきました。

  • 今日のセミナー参加をきっかけに区の防災情報を調べてみたらとても充実していて驚いた。知るだけでは駄目で実際の備えに繋げたい。これも自助だと思う。
  • 管理会社に、備えの実態を確認しておきたい。
  • 管理会社に任せられない、ということドキッとしました。いつも管理会社に頼っているので。自分ごとで考えることが大事と思った。
  • 災害が起きた場合に備え、事前にマンション内でルールを決めておき、周知徹底しておくことが重要であると認識しました。
  • 自助としては、日頃利用するものを緊急時に流用するアイディアとても参考になりました。

第2回「日頃からマンションで、何を共有し、備えておけばいいのだろう?~「そなえるカルタ」をヒントに考えよう~」

続いて、第2回の紹介を行います。まず、三菱地所コミュニティ株式会社 伊藤綾乃さんに「災害時のトラブルに備え、何を準備しておくことが大切か?」をテーマに、三菱地所コミュニティの取り組みや「管理会社が考える防災」についてお話頂きました。

災害時のトラブルに備え、何を準備しておくことが大切か?

防災の備えについては、当事者意識を住民の方に持ってもらうことが大事と考えてらっしゃいます。過去に、とあるマンションで火災報知器の誤報という出来事があったそうなのですが、その後、そのマンションでは防災訓練への参加が増えたそうです。火災報知器がなったことで、実際に災害は起きるということに住民の方が気づいたからと言えます。この例からわかるように、やはり、何かのきっかけに当事者として自覚できるようになると、おのずと防災について関心が向くようになります。そのため、管理会社として、興味関心を持ってもらえるように色々と情報提供をされています。

また、具体的に在宅避難の備えとして「防災備品」も紹介しているそうで、特に大切なのは「トイレの備え」ではないかとのことです。意外と知らない方も多いのですが、マンションでは配管が壊れると水も流せない状況になるので、その時に備えとして凝固剤が必要です。実際に、凝固剤を使うとどのような状況になるのかの実演もして下さいました。

さらに、食料などの備蓄も、東北大震災の時に8日間食糧が届かなかったケースもあるので、7日間の備蓄があると安心ではないかということです。ただし、防災用のものというよりは、スーパーの特売日に、お菓子や日持ちのするものを買い、1年サイクルでストック・消費していく方法がよいのではとアドバイスがありました。

その他、モバイルバッテリー、クーラーボックス、ごみ袋、ラップ(食器にかぶせて使える)、携帯ラジオ、口腔ケアグッズ、ウェットティッシュ等があると便利ではと紹介頂きました。

その後、コロナ禍での防災訓練の例として、オンラインを活用した「津田沼奏の杜」の取り組みを紹介いただきました。
オンラインを活用すれば、自宅から防災訓練に参加できます。具体的なプログラムとしては、安否確認訓練の様子や防災倉庫、地域の防災施設の中継などを行っています。
また、「自宅の備え」を共有するワークショップの実施例もご紹介いただきました。お互いに住民目線での備えておくとよいもののアイデアなどを共有することで、自分の家でもこういったものが必要、または今の状況では足りないと意識し合うことができるようになり、備えに対する次の行動につながるそうです。

○津田沼「奏の杜」エリア防災訓練実施 プレスリリース
mecg_210315_tsudanuma.pdf

また、7月18日の講座の津村さんのお話にもありましたが、マンションのフロント担当は、いくつものマンションを担当していることも多いので、すぐにどのマンションにも駆けつけたくても駆けつけられない状況だそうです。やはり、マンション内で在宅避難に備えておくことが必要といえます。

続いて、ミニ体験会として、「そなえるカルタで話し合ってみよう」を行いました。

そなえるカルタで話し合ってみよう(ミニ体験会)

伊藤さんから、三菱地所グループの防災の取り組みとして制作したそなえるカルタについて、事務局が用意したチェックシートを確認しながら解説いただきました。

○そなえるカルタ
https://www.mecsumai.com/bousai/sonaeru.html 

そなえるカルタは、過去の震災の現場の声を基に制作されており、「今日から備えが大事だ」と考え行動を起こせるようにという意図で制作されているそうです。詳細な項目設定がされており、必要だけど盲点となりがちなことについて改めて考えることができるようになっています。

そなえるカルタの中には「ジレンマカルタ」もあり、マンション内ですぐには答えはでないが、話し合っておいた方がよい項目について問いかけるカードがあります。例えば、その中には「安否確認」に関する項目もあります。安否確認は、個人情報との兼ね合いや日ごろのお付き合いがない場合どうしたらよいかと考えるところもあり色々と課題があります。しかし、阪神淡路大震災では、要救援者の80%が近隣住民から助け出されたということもあるため、どんな人が住んでいるのか、救助が必要なのは誰か、安否確認はどうやって行うのか、そうしたところをマンション内でルールを決めておくとよいのではとアドバイスもありました。

最後に、「自分のマンションの災害への対応力を高めるには?」をテーマに参加者の皆さんにふりかえって頂きました。

ふりかえり

  • 防災訓練をしてもいつも限られた人しか集まらないのが多くのマンションの状況かと思います。リーダーと一部の人たちで訓練を進めることで情報を共有しながら徐々に参加者を増やすのが早道かもしれないと感じています。
  • マンションとしてどうしたら良いのか、知恵を出さなければならないと思いますので、差し当たり出来ることから始めたいと思います。

また、事務局より、公益財団法人まちみらい千代田によるマンションの「安全・安心整備支援」や防災マニュアルを紹介し会は終了となりました。

<ご参考>
○安全・安心整備支援
https://www.mm-chiyoda.or.jp/living/prevention.html

○防災マニュアル
https://www.mm-chiyoda.or.jp/living/11723.html

参加者の声

2回の講座を通じて、参加者の方より、以下の感想がありました。住民全体の協力や、マンション防災そのものについて見直す必要があるのではといった声が聴かれました。

・防災について、これまで考えていなかったことが、こんなにも多いのかと改めて気づきました。
・自分の立場(町会の役員、マンション管理組合の理事長)で、「そなえるカルタ」や「ジレンマカルタ」を利用して、考え直したいと思います。
・災害への備えの再認識ができました。慌てることのないよう、このプログラムに参加できたことを糧にできるよう準備をしたいと思います。
・「ジレンマカルタ」により、備えなければならない事項が沢山有ることを改めて気づかされました。
・千代田区という狭いエリアに限定しており、かつマンション居住者に限定している点で、一般論ではなく必須の備えがよく理解でました。
・戸建てからマンション暮らしになって、防災への考えを変えないといけないと思いました。
・マンションは共同生活なので全住民の協力が大事ですが、現実は簡単ではなさそうです。まずは組合の理事会で検討する処からスタートですね。
・備蓄に関してたいへん参考になりました。特に災害時に必要な水の重要性についての話が参考になりました。

本講座で、「災害に強いマンションライフ」を考えると、災害時に助け合うには日ごろのつながりやコミュニケーションが大切といった声もあったことより9月にマンション暮らしの「ちょうどいい関係」について考える講座を開催します。

「“ちょうどいい関係”のマンション・コミュニティをデザインしよう」

【日時】9月22日(水)20:00~21:30
【開催方法】Zoomによるオンライン開催
【詳細・お申込み】https://pro.form-mailer.jp/lp/d4fd9ac6228378