【レポート】オンラインちよだ探訪(番町・麹町編)
2022年12月2日に、「オンラインちよだ探訪(番町・麹町編)」を開催しました。麹町地区にお住まいの方を中心に22人の参加がありました。
本イベントは、新しくお住まいになった方が地域を知り、関心を持って頂くきっかけを提供することを目的に開催しました。
また、これからの町会等のコミュニティ活動において、多世代交流の活性化、新しい人の参画を促す方法としてオンラインツールの活用も期待されることからも、オンラインによるイベントとして開催をしました。
今回は、番町・麹町版ということで、ゲストとして地域の歴史や文化にお詳しい六番町町会町の新井巖会長から、
・番町麹町の歴史的な視点からみた特徴
・町の移り変わり
・文人通りの紹介、文人通りに込めた思い
・地域のお勧めのお店
について、お話をいただきました。
また、明治時代から麹町でお店を営まれているよろず屋酒店の4代目の安田郁子さんにも、お店の歴史の紹介、ご自身の子どもの頃のお話やまちの移りかわりの様子、地域への思いについてお話をいただきました。
さらに、新しくお住まいの方で、地域の消防団や町会活動、福祉活動、地域のイベント開催などを行っている三浦裕介さんからも、地域で活動することについてお話を頂きました。
当日の様子
イベント案内ポスター
①番町・麹町のこれまで
新井会長からは、番町・麹町のこれまでということで、江戸時代から今までの番町・麹町の歴史や特徴についてお話を頂きました。
徳川幕府開府前から番町があったということや、「番町」「麹町」の町名の由来、麹町が番町に住む旗本や御家人の経済的な需要を賄うための町人町であったこと、明治期以降はお屋敷町として界隈に偉人や文人が多く住んでいたことなどのお話がありました。番町・麹町を舞台にした時代小説なども多く、また、江戸時代の地図(江戸切絵図)に掲載されている道がほとんど残っていることもあり、この道を歴史の偉人が通ったかもしれない、自分のマンションのある場所にかつて○○が住んでいたなどを想像すると一層自分の住んでいるまちに愛着を持てるのではと、会長はお考えで本日の会もそういった思いでお話をしてくださったそうです。
ただ、第二次世界大戦でこの界隈がほとんど焼けてしまったこともあり、歴史的な建物などが残っていないこともあり、地域の歴史や多くの文人が住んでいた町という認識がしづらく、会長曰く「歴史を破壊されたまち」とも。一方で、区と一緒にまちの記憶保存プレートという取組みもされており、このプレートをみると、番町・麹町の各所に偉人や文人が住んでいた場所といった痕跡を感じることができます。また、麹町地区連合町会のHPでも会長が監修された散歩コースの地図などもあり、これを使って散歩をするとより楽しくなりそうです。
また、ここで75年以上お住まいになっている会長としては、大きなまちの移り変わりもお感じになっているそうです。戦後の復興、高度経済成長期があり、バブル期には、地価の高騰で転出する人が多くなりオフィスビルが多く立ち並ぶまちになったという時期もありましたが、その後、マンション開発で新しい方が住むようになり、子どもの声が聞こえるまちになったことはすごくうれしいとのこと。子どもたちがいないと町が衰退するとお考えで、ぜひ、これから子どもたちが快適に暮らせるような環境のあるまちになってほしいと思ってらっしゃるそうです。
新井会長からのお話の様子
まちの記憶保存プレート
②番町・麹町のお店について
明治時代から続く酒屋さんである安田さんから、お店のことや歴史についてお話をいただきました。萬屋(よろず屋)さんは、字のごとく安田さんのひいおじいさんが何でも売ろうという心意気ではじめられたお店で、御用聞きにいくご商売をされていた時代もあったそうです。時代に合わせ、食料品を売る会社から酒屋さんへと移り変わって行っても、地域の方に○○を買う場所がないと言われれば、それを取り寄せたりと地元の方のためのお店を運営されてきました。今でもその時の気持ちをということで、ご近所の方が買ってくれるからということで切らさずにおいている商品もあるそうです。また、麹町にオフィスビルが建ちはじめ通う人が増えると、そういう方のお昼を食べるところがないという声にこたえる形でこの界隈で初めてお弁当を作って出すようになったのもよろず屋さんです。
また、安田さんご自身も地域の色々な役や町会なども関わってらっしゃり、まちやつながりを守ることに尽力されています。地元のお店としてのエピソードとして、新しくお住まいになったお母さんとそのお子さんが幼稚園帰りに必ず立ち寄って、ただいまと言ってくれたことがあり、その後、そのお子さんが小学校になって一人で通うようになってもただいまといって立ち寄ってくれるようになったとのこと。こうして顔見知りになると、まちの見守りとして気を配ることもできるとのことで、ぜひ、地元のお店をそのような役割も担えることを知ってもらいたいとのことです。
また、お写真を提供頂き、安田さんの小さいころの町の様子なども拝見し、町の移り変わりについてお話をお伺いしました。
安田さんのお話の様子
さらに、新井会長からも、うなぎの秋本さんと内田百閒のエピソードやお勧めのお店などもご紹介いただきました。事務局からは、地元のお店を紹介したり、テイクアウト情報など、まちの情報を発信している「あるまっぷ」の活動についてもご紹介させていただきました。
③地域の活動について
番町・麹町のまちに、新しくお住まいになった人でも関わることができるとして、消防団や町会の活動をされている三浦さんから、お話をお伺いしました。
引っ越しをしてきて近所の方と知り合いになったことをきっかけに、お祭りに参加してみないかと声をかけてもらい「山王祭」のお手伝いをするようになり、消防団に誘われ消防団に参加するようになったら、町会活動にも声をかけてもらい参加するようになったエピソードについてお話をいただきました。
一方で、三浦さんは、築地の魚河岸などの魚の目利きのプロを先生とした料理教室を企画されたり、今年の5月には番町の森で大妻女子大の先生とコラボをした子どもたちのための大規模イベントなども開催されています。
まちに関わることで、ビルが立ち並ぶ無機質なまちという印象から、都会のはずなのに田舎のような人情味のあるまちといったように、まちに対する見え方が変わるのではという三浦さん。なかなか新しい人には、こうした地域のコミュニティに入るにはハードルがあるのではと感じてらっしゃるそうですが、新井会長や安田さんからは、町会としては新しくお住まいになった方の参加をすごく望んでおり、ハードルを低くしているので、ぜひ声がけくださいとのことでした。
今日のような会がきっかけで、新井会長や安田さんのお人柄やお顔を知ることで、町の行事やイベントに参加しやすくなったり、そうした場で出会った時に声をかけやすくなるといったことになることが期待されます。
③まとめ
本日参加された方からは、
- まち歩きが好きなので今日の話を聞いて、まだまだ散策しがいがあると思った。町会参加はハードルを感じていたが、本日のイベントで地元の方のお話を聞いて距離感を近く感じた。
- 住むようになって、ちゃんと地域のことを知りたいと思い参加した。今日のお話を聞いて、人情味があって、つながりが生きているまちだと思ったし、そういうことが広まったらいいのではと思った。
- 歴史や文人のお話を聞いて、そういう方も住んでいたのかなと想像すると、地域に対する思いや誇りが高まり、住まわせてもらってうれしいという思いがひとしおとなった。
- 自分は町会の会長をしているが、これまでのアプローチで新しい方に町会に入って頂けないのではと考え、町会に密に関わっていない方の集まりにも参加している。こういうものが何か将来につながればうれしい。
といった感想が聞かれました。
最後に、新井会長からの「番町・麹町は、西洋音楽や西洋美術・英語・フランス語教育の礎を気付いた町であり、学校が多い教育の町、近代文学の町、官僚・実業家が住んでいた町として、歴史や文化のある町であるが、それは時代の中で変化をしつつ新しいものを取り入れてきた町であるといえる。これからもみなさんのお力を借りて、変化をし、新しいものにチャレンジしたい」というお言葉があり、終了となりました。
アンケートでも、今回の会について
- 改めて、住んでいる地域の良さを知りました。
- 自分の町を知るのにとても勉強になりました。又、昔から住んで 守って来てくださった方々のお話を伺い親しみが湧いてとても良かったです。
- 番町・麹町について知りたかったので、長年住む地元の方の昔からのお話が聞けてすごくよかったです。なかなか縁がなくちょっと敷居が高い感じだったのが、お話を聞いてあたたかい気持ちを感じられました。
また、オンラインイベントについては、
- とにかく気軽
- 気候に左右されることもないし、わざわざ出かける手間がかからない。提示された話題に関して、手元のPCで簡単に調べたりメモを取ったり出来るのがよい。
- もっと交流したいと思った。オンラインは参加しやすいのはよいが、その場で交流することが難しいので、オンラインも対面の活動もあったらよいのではないか。
といった感想がありました。
参加された方の感想より、地元のことを知ることが、まちに関心をもつ一つのきっかけとなることが伺えます。また、今回、多くの方にご参加をいただけて、こうした地域のイベントをオンラインで行うということの可能性も感じられました。
<ご参考> イベント内で紹介した情報など
1)麹町界隈わがまち情報館 おすすめの散歩道(紹介した文人通りの地図もあります)
https://koujimachi.net/sanpomichi.html
2)麹町界隈わがまち人物館
3)麹町界隈わがまち情報館
番町・麹町の町会が集まっている連合町会のホームページ
4)番町の森
https://www.bancho-forest.com/
5)あるまっぷ
https://armap.tokyo/
6)番町・麹町のお店
・よろず屋酒店(麹町通り商店街サイトより) https://koujimachi-dori.com/yorozuya/
・うなぎ秋本 https://www.unagi-akimoto.com/
・おこのみやき文字平 https://www.facebook.com/mojihei/
・アジャンタ https://www.ajanta.com/