【ゼミ 第1回:レポート③】千代田区のコミュニティ活動の実践事例の紹介
これまでのレポート1と2で「マンション・コミュニティ・ゼミ」全体の流れ、東京パークタワーでのコミュニティ活動について紹介させて頂きましたが、今回は2人目のゲストとしてお越し頂いた、千代田区社会福祉協議会 梅澤 稔さんによる「千代田区のコミュニティ活動の実践事例」のお話を紹介させて頂きます。
梅澤さんは、千代田区の外神田。ご両親が銭湯を経営されており、毎日のようにお客さんが集まり、非営業日でも会が行われていました。当時のことが今、コミュニティのことを考えるきっかけになっています。
社会福祉協議会は、社会福祉法に則り、住民同士で支え合う福祉活動を進めるための機関です。
「福祉の仕事をしている」と言うと、職員が困っている方のところに行ってサポートすると思われがちですが、地域住民の活動でサポートするというのが社会福祉協議会の基本的な考え方です。
例えば、要介護の高齢者の支援を考えてみると、国の介護保険サービスがベースに、区独自の取り組みや民間サービスもあります。ですが、そうしたサービスを活用するだけで、高齢者の方の困った気持ちを解決し、安心して暮らせるようになる訳ではありません。
例えば、寂しい、誰かと話したいと思っている人。
「自分は大丈夫」と仰るけれど、実際は大丈夫ではない人。
そのような人の支えは、役所のサービスでは難しいのですが、地域の助け合いがあり、寂しいと思っている人に一声かけ、困り事を手伝いあうことができれば、その人が地域で心豊かに安心して暮らすことができるでしょう。
そうした助け合いの仕組みを作ったり、支えたりするのが社協の仕事です。
もう1つ、千代田区社協として力を入れているのが「ご近所福祉活動」として、町会で福祉部を作ってもらうよう呼びかけています。従来の町会が持っていた支え合いの機能を活かし、地域の中で支え合うための取組です。千代田区内では全107町会中、64町会が福祉部を設けています。
町会での具体的な例として、地域に住む音楽の先生をお招きしての「歌う会」は、学校の音楽室をお借りして、高齢者の方を中心に集い、懇親を深めています。
各町会で、どんな人がどこに住んでいるか分かるように「支え合いマップ」の作成もしています。
単身世帯や、ご高齢の夫婦世帯など見守りが必要な方のお住まいを住宅地図に落としています。その地図上で、見守られている人と見守っている人を線で結ぶと、逆に線が引かれていない人は誰からも見守られていないことがわかります。そうやって「今度、声をかけてみよう」と思ってもらえるようにしました。
他にも、地域の皆さんの顔が分かるイベントとして「隣人祭り」の開催を町会の皆さんに提案したり、一軒一軒を回って声掛けする「戸別訪問」を推し進めたり、福祉について学ぶ機会として「認知症サポーター養成講座」を行ったり、地域の中で支え合うための様々な取組を行ってきました。
一方で、地域住民の方の中には、町会に参加したくない人、町会の世話になりたくない人も少なくありません。そんな方のために、社会福祉協議会では誰でも参加できる「ふれあいサロン」を設けています。
ふれあいサロンの中でも様々な催しが行われています。
たとえば、近くの大学生がボランティアをしたいと申し出てくれたので、サロンにいらっしゃる方々と一緒にジャムを作って食べたり、九段下にあるカフェの店員さんがコーヒーを持ってきてくれて、一緒に話したり。地域にある喫茶店をお借りして、交流する機会も設けてきました。
ちょっとした困りごとがあった時、電話すれば近所で協力してくれる人がサポートしてくれる仕組みとして「困りごと24」を始めています。夜間は企業のコールセンターが受付し、24時間365日、対応しています。
依頼事で一番多いのは蛍光灯の交換。東日本大震災の際にも、倒れた本棚を原状復帰し、止まったガスを復旧するなど、機能しました。
このような経験を踏まえて、梅澤さんらが考えているご近所福祉活動の良いところをまとめます。
- ちょっと困った時に気軽に相談できる
- 必要な人に必要な情報を届けることができる
- 日常生活で異常に気づき、素早く対応することができる
- 孤立感を防ぎ、人のつながりや心のつながりを持つことができる
- 災害のときに、日常のつながりが効果をあらわす
- 口コミによる取組の広がり
ただ、地域での活動の担い手は高齢化が進むに連れて、減っています。
地域や隣人に関心を持つ住民の方も少なくなっています。マンション住民の方も増え、なかなか地域との交流が難しくなっています。多すぎるほどの情報がありますが、地域のことや助けを求めている人のことは届いていなかったりもします。
そのような経験から、コミュニティをテーマに、人が集まる機会をつくる、楽しく・ワクワクする活動、つながり、仲間になることが必要だと考えています。
そうした状況を踏まえ、地域の住民同士がワクワクしながら交流できる場として新たに企画したのが「ちよとも100」。
地域住民から参加者を募り、「千代田区に友達が100人生まれたら、何ができるだろう」をテーマに、ワールドカフェという手法を使って話し合うと、沢山のアイデアが出ました。
千代田区社会福祉協議会として行う「ちよとも100」は全3回で終わりましたが、その後も「ちよともを自分たちで運営しよう」と有志の方が動き始めてくださっています。
こうした色々な人が参加したいと思ってもらえるような場をもっと作っていければと考えています。
千代田区社会福祉協議会の者ですと名乗ると堅苦しく思われがちですが、「みんなでみんなの幸せを考える会」だと覚えて頂けるとありがたいと梅澤さん話していました。
梅澤さんのお話の後にも、質疑応答や意見交換が行われました。
Q. ちよとも100を実際にやってみての新たな発見はありましたか?
A. 色々な人と出会えるということ自体が刺激になって楽しいことであると気付きました。
Q. 地域の人同士で交流する機会を設けるに当たって、難しいと感じていることはありますか?
A. 実際のところは良く知らないのにイメージで判断しているケースが多いように思います。
例えば、ある町会長の方が、マンション住民の方から「町会の人は、みんなお金持ちで凄い家に住んでいるから声を掛けにくい」と言われたという話もありました。町会の役員の方が、もの凄く立派な方だと思い込んでいるところがあると思います。実際に話してみると、そんなことは無いのになあと感じることは多いです。
Q. 直接、きちんと話すことは大事だと思います。
A. いろんな人がいらっしゃるので、それぞれに合わせる必要はありますが、だからと言って何もやらないのはどうかと思います。
例えば、隣人祭を開催した時、道路を封鎖して、ござを敷いて交流したら苦情が入ったこともありました。こうした場合もやり方を考えていけば良いと思います。
—————————————————————
以上で、梅澤さんによる千代田区のコミュニティ活動の実践事例の紹介は終わります。
千代田区内では既に数多くのコミュニティ活動の実践が行われており、そうした活動の周知を通じて、より多くの地域で豊かなコミュニティを育める可能性があることを実感しました。
これまで3つのレポートで、マンション・コミュニティ・ゼミ 第1回の様子をお伝えしました。
第2回以降の内容もレポートで紹介していきます。
※マンション・コミュニティ・ゼミは、まだ追加での参加者を募集しております。
参加を希望される方は下記よりお申込みください。
https://chiyolab.jp/archives/2090