マンション・コミュニティ・ゼミより

コミュニティの基礎知識(1)~ コミュニティって何?

現代の都心で、マンションで、コミュニティをつくるとは、どういうことで、どんな意味があるのでしょうか? また、人のつながりをつくり、コミュニティを醸成していくには、どのような取組が必要になるのでしょうか?

コミュニティづくりのヒントとしていただくために、マンション・コミュニティ・ゼミでの内容をもとに、基本的な考え方を紹介していきます。

コミュニティという言葉を耳にしますが、どのような意味なのでしょうか?

多様な定義があるのですが、マンション・コミュニティ・ゼミでは、「地域に住む人たち、関わる人たちがつながり、助け合ったり、支えあったりできる関係」といったん定義し、ゼミ生の議論でより具体化していこうと考えています。

助け合える関係、困った時に頼りになる関係といっても、今の都市生活ではお互いによく知らない人が多い中で、すぐにはできません。そのような状況でコミュニティをつくろうとしても、すぐにはできないでしょう。

今の私たちには、「つながりをつくり、分かち合うものを増やし、助けられる・支えられる経験を通して、コミュニティになっていく」というプロセスが必要であり、そのプロセスを効果的に進めるための知恵やノウハウが必要とされています。

これは、地域コミュニティや人の関係が変ってきたことも影響しています。

以前は、地域・村、企業などのしっかりした基盤があり、そのうえで人々が助け合い、つながっていました。

例えば、地域に長く住む人が多く、子育てや葬儀なども地域の人の助けなしにはできませんでした。古くは井戸などご近所で共有するものも多くありました。情報も回覧板や口コミが大きな役割を果たしていました。ある町に住むことになったら、その町の人と関わって生きていくのは大前提であり、祭りや清掃活動に参画するのも当たり前でした。そのような関係の象徴が町会であり、「ある町に住んだら、その町の町会に入るのは当たり前」という感覚が広がっていました。

しかし、現代では、多様な社会サービスが充実し、利便性も高まっているので、ある町に住んでも、町の人たちと関わらなくても生きていけます。葬儀も葬儀社に依頼すれば、周りの人たちに知られずに行うこともできます。さらに、プライバシーの概念が発達しており、個人や家族のことを「知られたくない」という気持ちも高まっています。そのため、「町に住む=町の人と関わる」という感覚は薄れ、「町の人に頼らなくても生きていける」という感覚が強くなっています。そのため、「町に住んだら町会に入るのが当然」という感覚も薄れています。

そこで、現代では、「人々が思い、分かち合いたいことを軸に、関係性を育てていくコミュニティづくり」が必要とされるようになっています。
それは、身近な生活や地域の中にある課題や思いを分かち合い、「こんなことが必要だ、実現できたらいい」という目指す姿を分かち合っていくことで関係性が培われていって、コミュニティになっていくことを意味します。

つまり、コミュニティという言葉の意味が、「今ある基盤をベースにした関係づくり」から「関係性を育み、基盤を分かち合い、つくっていくもの」に変わってきているのです。

これは町における関係づくりも同様です。

町という生活空間を共有しているからこそ、課題や可能性もたくさん共有することができます。ただし、日々に自分の生活をしているだけだと、なかなかそのことに気づくことはできません。

そこで、これからのコミュニティづくりでは、身近にある課題、可能性や自分の思いを出し合い、共有することから始まります。それを出し合うきっかけづくりが最初のポイントです。対話やイベントなどの交流の中で地域を知り、周りの人たちのことを知り、自分のことを話す。そして、何があったいいか考えて納得し、一緒にできること、そこへの関わり方をイメージできるようになると、つながりが生まれます。小さなつながりを一つ一つ蓄積していくことが、地域の関係性を育てていくことになります。そこから、助け合い、支え合う関係性=コミュニティを生み出していくことが、必要になっているのです。