【レポート】 地縁コミュニティを未来志向で考えてみよう!

2023年3月22日(水)に「地縁コミュニティを未来志向で考えてみよう!」が千代田区役所で開催されました。町会に関わっている方を中心に23人の参加がありました。千代田区の人口構成や区民のライフスタイルが変化してくる中で、10年後、20年後に向けて、どのようにまちの文化をつないでいくかを検討していくため、区内での地縁コミュニティでのあたらしい取組みや知見を共有し合いながら、これからの地縁のつながりや町会などがどのような姿になるとよいのかを、多様な視点で考えることが目的です。

1.プログラム内容

冒頭、事務局の広石より「地縁コミュニティ」について、我々が暮らしをしていく中で、従来のようなお互い様が難しい状況にあり、それが地縁コミュニティの難しさとなっていること、関われるなら関わりたいが関われない人が少なくないのが現状であることを説明しました。

さらに、その中で、大事なことは「同じ地域を共有していることを意識する」することであり、例えば、大災害の時には自助であるマンション自体の防災だけでは完璧ではないことも認識する必要があるのではないか、また、目的別のコミュニティが多いが、目的だけではなく地元で誰かと出会ったり、知り合うことの良さもあるのではないかと投げかけ、本会では「地縁コミュニティの持つ可能性、どうコミュニケーションしていけば良いのか」を議論したい旨を説明しました。

取組み紹介

新しい人の多様な参画を促すためのデジタルツールの活動など新しい取組みをしている区内の町会等から、取組み紹介がありました。

① 西神田町会「YouTube(遊宇部)による地元情報の発信」

西神田町会の角田光正会長より、町会の活動や地域の情報を配信するYouTubeチャンネルである西神田町会遊宙部の取組について紹介がありました。

西神田町会では、コロナ禍において対面で会うことが難しくなった時に、町会の情報のやり取りをLINEでできないかとLINE講座をしました。しかし、講座で使い方を習っても、結局は日常的に使ってもらえないということがわかり、地元の情報を小さなことでも頻繁にYouTubeにアップし、ご近所や知り合いの人が映っている動画を見ることを楽しむことから始めてもらいたいと、遊宇部の取組みを行うことになりました。会長をはじめとした担当が、地元の行事などをスマホで撮影し編集してすぐにshort動画(1分程度)にしてアップするということに取組んでおり、今では50本くらいになっているそうです。

また、カメラを持って街を歩いて撮影し、動画を作ってみよう!というイベントも開催しました。参加者が楽しんでいる様子がわかり、YouTubeをきっかけに、何かを一緒に作る過程が大切だと感じられたそうで、今後はそういった取組みをしたいとお考えです。また、自分たちが楽しくやることが一番で、その姿を見て町会は楽しいと感じてもらいたい、町会に入るとメリットがあるというよりも一緒に何かをやることが楽しいということを伝えたいと思っているとのことです。
https://www.youtube.com/@24kanda

② 多町二丁目町会「HP開設及び非町会員向けのイベントの開催」

多町二丁目町会 田畑会長より、町会独自のHPの開設及び非町会員向けのイベント実施についての紹介がありました。

元々神田公園地区では「大好き神田」というサイトがあり各町会の情報も見られましたが、もっといろいろな人に見てもらえるようなものにしたいと思い、東京都の地域の課題解決プロボノプロジェクトを活用し、町会独自のホームページの作成に取り組みました。また、地域に15,6戸のマンションがあるものの、そこに住む子育て世帯と町会の接点がなかったため、町会員でない方にも、もっと地域のことや町会のことを知ってもらえるようにと、11月に「もっと、知って、神田」というイベントを開催しました。花万等(はなまんとう)をまちの中に置きお祭の紹介をしたり、子どもたちが楽しめる催し行い、また、イベント参加者には、町会HPのQRコードを案内し、今後も町会イベントの情報が得られるように工夫もされたそうです。当日は、30人ものお子さんの参加があり大盛況だったため、今後もこのようなイベントを毎年秋に続けていきたいと考えています。

会場からは、HPの運営について、運営方法やメンバー(ITが得意な人がいるのか)についての質問がありました。多町二丁目町会の町会員には、得意な人がおり、また、その人たちは連合町会のHP「大好き神田」委員会にも参加していることから、そこでも勉強しているそうです。また、HPに関わらず町会の新しい取組みに対する、東京都の支援制度についても事務局から紹介しました。

③ 富士見二丁目町会「LINE公式の活用、子供向けイベント等」

富士見二丁目町会の鏑木会長、総務部の及川浩二朗さんより、富士見二丁目町会のLINE公式や子供向けのイベント等の紹介がありました。

富士見二丁目町会の地区では、高層マンションが多く、建設当初はマンション全体で町会に入ることになっていたものの、その後、町会に入らない権利が認められ、町会活動の維持のためには、マンション全体ではなく、個人の意思での加入を促す必要がでてきたそうです。そのため、町会の活動紹介用のHP開設したもののビュー数も伸びず、また、年に1度の大きいイベントでは接点が持ちにくいことも分かったため、気軽に参加できる小さいイベントをたくさん実施し、接点を多く設ける方針にしました。また、区の地域コミュニティのデジタル活用支援事業を活用し町会のLINE公式も立ち上げ情報発信にも努めています。そして、必ず、イベントに参加した人に対してHP・LINEのお知らせや、町会参加の呼びかけなども行っています。また、イベントに参加する動機としては「楽しそう」と「役立ちそう」があるとも考え、役立つイベントとして「高齢者向けのLINE講座」、「楽しそう」というイベントとしてはファミリー向けにミニ四駆などの子どもが参加できるイベントを開催するようにしました。

また、色々なイベントを自分たちだけでやるのは難しいので、地元の法政大学のボランティアセンターに相談をして、学生ボランティアやサークルなどを紹介してもらったり、地元の子育てサークルと共催にするなどして、運営協力をしてもらっているそうです。

まだ取組み始めたばかりのため、これらの取組みの効果についてはわからないとしているものの、こうしたイベントアイデアは役員会からも色々と出てくるそうで、今後も色々な人の協力を得ながらチャレンジしたいとのことでした。

会場からは、イベントの運営についての質問があり、自分たちだけでできることは少ないからこそ、周りの人との繋がりの中で一緒にやっていくことが大事だと思っていること、法政大学のボランティアセンターに相談すると学生の協力が得られることについて説明がありました。

※富士見二丁目町会HP https://fujimi2.sakura.ne.jp/

④ 東松下町町会「新しい住民の方とコミュニティを作るための取組」

東松下町町会の関さんから、活動についての紹介がありました。東松下町は小学校跡地に、区営住宅・民間住宅ができて500世帯くらいまで増え、従来の住民から見れば10倍くらいの住民となったそうです。そこで、これらの方々とどう一緒にコミュニティを作っていくのかが重要であると考え、色々な取組みをされています。

どう町会に人を迎え入れていこうかという検討を進めていく中で、自分から町会に入りたい!と思ってもらえるような仕組みが必要ではないかということになり、町会に対する楽しさをどう作れるかについて、1~2年間話し合いをいったいったそうです。その一環として、HPを立ち上げたり、活動の動画を作成しマンションの入居説明会で紹介などに取組んできました。

また、増えてきた子どもたちのための取組みを考える中で、ラジオ体操や、新一年生のお祝いの会が復活し、町会の活性化にもつながっているそうです。

コロナ禍で色々な活動が止まる中でも、ラジオ体操を工夫して行ったり、まちの写真展を地元の企業の力を借りて行うなど、少しずつできることに取組まれていたそうです。その他、新たにみんなで集まる場所となった地桜通りに鯉のぼりを上げるイベントや、みんなで藍を育てて藍染をするなど、色々な取組みにチャレンジしています。特に藍染めは、種まきから始め藍染までを行えるため単発ではなく、継続的にでき、こうしたものが関係づくりには必要だと感じているそうです。また、町会の情報発信は重要と考え、SNSや紙ベースなど多様な手段で発信しています。

コロナ禍を得て、町会自体が、何かできそうなことからやってみようかという動きが出てきているとのことで、今後も色々と取組みたいと考えられています。

会場からは、マンションの住民の方からの反応についての質問がありました。新しく建てられた区営住宅では半分、民間住宅は30%が町会に入っている状況になってきているそうで、イベントなどに参加してもらいながら加入を待っている状態とのことです。さらに、町会に入っている子供と、入っていない子供はイベントで分けるのかといった質問もありました。そこで分けると来づらくなってしまうと考え、イベントのお知らせも加入に関係なく、全員に声がけし、子どもは参加無料として、気兼ねなく参加できる工夫をし、そこで、親御さんが必要だと思えば、町会に入ってもらえたらと考えているとのことでした。

※東松下町町会HP  https://higashimatsushitacho.tokyo/

⑤ 東京大神宮通り・飯田橋西口通り商業連合会「大学との商店街の活性化の取組」

東京大神宮通り・飯田橋西口通り商業連合会の鏑木副会長と高安さんから、商店街の活性化についての取組み紹介がありました。

商店街の活性化について法政大学経営大学院&地域研究センターの社会人学生のみなさんがフィールド調査をし、活性化案の提案報告会を行ったことについて紹介がありました。これらの提案を聞いて、改めて、商店会全体として単発のイベント開催ではなく、街のイメージカラーを決めて永続的な人の関わりを作っていくことが大事だと気付かれたとのことです。また、大学としても、今回、フィールド調査に参加した学生は、今後中小企業診断士となる予定の人が多いため、地域の人と交流が持てたことはすごく勉強になると感謝されたそうです。一方で、こうした活性化案はあくまでも案であるので、実際に取組んで行くことが重要であり、東京都の支援制度も活かしながら一歩づつ進んでいこうと思っているとのことです。また、ウォーカブルまちづくりにもチャレンジしており、大神宮を活かしたイメージアップができるような取組みも実際に取組んでいく予定です。

まとめ

これまでの取組み紹介を受けて、参加者からもご自身の取組みや今日の感想を伺いました。

町会にまだ参加していない人からは、「どうやって町会に入ったらいいんだろうと思っていたが、今日の話を聞いて、もっと目を見開いてみたら見えてくると思った。ただ、やはり入り口がわからないのが難点と思っている。」

と、また、その他の方からは「婦人会でスマホ教室を継続に実施しているが、みなさんで楽しんでやれていることが、会のまとまりにもつながっている」「デジタルツールについては、間違った使い方をしてしまう懸念もあり、町会内での利用に一歩踏み出せないでいるが今後は検討したい」

といった声がありました。

最後に、グループで本日のイベントを通しての気づきの共有を行い終了となりました。各グループでは、以下の意見がありました。

【グループでのディスカッションの内容(一部)】

  • 自分が子育て世代だったとき、町会の手伝いをしようとしたら「今は大変だと思うから、子育てを優先してお手伝いできるようになったらきてね。」と声かけしてもらったのが記憶に残っている。その言葉が残っていて、自分が子育てに余裕ができてから手伝いに行った。こういうつながりができていくのが良いなと思う。
  • 町会は新しい人が入ってくると、警戒してしまう。新しい人を迎え入れる姿勢ができていないように感じる。
  • 町会に関わりたいと思ってる側からしても、何か魂胆があると思われたくないなという気持ちも強い。元々世田谷に住んでいて地域にお世話になっていたので、場所は違うけど千代田に返したいという気持ちがある。
  • 雑巾掛けなども話が出ていたが、まずは町会のイベントに参加して顔を見せていくことが大事だと思う。顔がわかると町会側からも「いつも見るけど、町会まだ入ってないの?」と声をかけやすい。顔がわかると自然とそのような流れになっていく。
  • このような区内の町会の取組みを共有するのは有意義である。何か、情報をまとめるとよいのではないか。
  • 千代田区では色々なイベントなどがある中で、町会を楽しいと思い、生活の中での優先順位を上げてもらうのにはハードルがあると思うが、とにかくチャレンジしていかないといけないと思う。

参加者の声

本会についてアンケートにより感想や意見を伺ったところ、町会の枠を超えた意見交換、情報交換の場が有意義であった、勉強になったという声が多く聞かれ、今後もこうした機会が必要であるとの声がありました。

〇参加者の感想

・ テーマが「地縁」と絞られているので、大変興味深かったです。各町会で取り組んでいる例が参考になった。
・ YouTube(参加する楽しみ)、マンションの入居説明会へ町会のアピール、などが印象的でした。
・ たくさんの様々な取り組み、工夫、そこに至るまでの経緯など勉強になりました。町会でもシェアして、企画・実践していきたいと思います。
・ とても勉強になりましたし、大きな可能性を感じた。ちょっとしたきっかけでできたり、楽しく思う人はたくさんいるとは思うので、とてもよい機会だったと思います。
・ 他の町会の活動のものすごさに驚きました。できることから参考にして地元で活かせればと思います。

〇これからの地縁コミュニティを活性化するために大切だと思ったこと
・ 「楽しさ」「役立ち」と感じられるイベントを提供していく。祭りは一つの機会で、工夫次第でマンション住民を惹き付けることができるのではないか。
・ 何かやりたいと思った人が実行できること、フォロー・バックアップできる体制、他の地域との情報交流、連携、コラボもできるとよいと思います。
・ Keymanがいるかいないかもあると思いますが、想いがある人と知り合えたので、横のつながりでまずは共有し合えるようになっていったらいいなと思いました。
・ 若い人(ファミリー)が興味を持つこと、実際に役立つこと、などを考えて活動を考えて行きたいと思います。
・ デジタルの話がたくさんでましたが、やはり、顔を合わせてみることが大切ではないかと思います。
・ 核となる人材が必要。誰がそれを担うのか?となると難しいし、経済的な負担も高いように思う。新しい人と、昔からいる人が、LINKできるようになればいいと思います。
・ SNSを活用した広報が大事と思いました。
・ 在勤者をいかに取り込んでいくかが、活性化の鍵と思います。
・ 他の方々の活動を知る今日のような機会が大切だと思いました。また、それぞれが情報交換をする場が横のつながりにもなり、千代田区全体が良くなると思いました。
・ 自分の力だけでなく、大学や会社との連携が大切だと思った。