【レポート】ちよだコミュニティラボライブ!19秋
2019年10月30日(水)、法政大学 ボアソナードタワー26F 会議室にて、法政大生による千代田区における地域活動実践者への調査結果報告会+実践者との交流会「ちよだコミュニティ ラボライブ!19秋」が開催されました。
法政大学の学生が、授業の一環で、参加型まちづくりの専門家である杉崎和久教授(法政大学大学院公共政策研究科)のコーディネートにより、千代田の8つのテーマで活動を実践している人にインタビューを行い、それを通してまちづくりの全体像を把握することを体験しました。
本イベントは、これらの学生の千代田区を多面的かつ現場の声に基づく調査の報告を聴き、調査に協力いただいた方も交えて行う交流会として開催しました。学生が体験から学んだことを今回のラボライブで共有することで、地域を総合的に理解するとは? 地域活動が地域を支えるとは? 千代田の新しい可能性とは?を考える会となりました。
当日は、法政大学の学生や教員の方々の他、千代田区内の町会、NPO、大学、地域活動団体、在勤の方など、千代田区に関わる様々な立場の方たち約50人にご参加いただきました。
■はじめに
最初に、進行のちよだコミュニティラボ事務局 広石よりちよだコミュニティラボの紹介と、サイトの紹介をさせていただきました。
続いて、今回の共催でもある法政大学の授業「現代政策学特講Ⅰ」を担当されている杉崎和久先生より、授業の紹介をしていただきました。オータムセッション、5日間の集中講義で、受講生は、ほとんどが法学部の学生さんだそうです。
政策に興味がある学生さんが多く、教室だけの勉強でなく実践的に街に出ようと今回の調査を行うことになりました。
その後は、ちよだコミュニティラボ主催イベントの恒例である自己紹介に。
「名前」「千代田区との関わり」「千代田区について一番好きなこと」をテーマに、話したことがない人を見つけて、8分間で8人以上と交流してもらいました。
学生さんも大人の皆さんも入り混じって、積極的に交流をされていました。
■第1部 法政大学の学生による調査報告
第1部の調査報告では、①~⑧の8つの班に順番に、発表して頂きました。
①新旧住民等の交流
最初に発表したのは、「新旧住民等の交流」をテーマに調査した班です。
取材をしたのは「カフェ アマルフィ」「神田錦町 更科」「NPO都市住宅とまちづくり研究会」の3つ。
取材を通しての感想としては以下が挙げられました。
・新旧住民の交流は、一言で言っても難しい
・新規住民が町会に定着しない
・コミュニティ自体に興味があっても、詳細がわからないので怖い
・町会自体の基盤、関係が固まってしまっている
・広報・宣伝費に出費がかさむ
・町会の人と関わりを持つ人が近所にいれば町会に入りやすくなる?
・地元のお店、老舗を回ることの大切さ
・お金がないので定住しづらい
・新規住民にとっては地元のルールが分かりにくい
こうした感想を踏まえての提案は「各マンションなどに”町会とのパイプ役”を設置する」こと。
新しく引っ越してきた人との”パイプ役”の人と会話・コミュニケーションをとることによって、町会の窓口を広げることができるのではないかと考えました。
それが、結果として、町会自体には興味はあるが、入り方や詳細がわからないという人の躊躇いや不安を解消することにもつながるのではないか、とのことです。
②商業者主体の街の活性化
2番目に発表したのは、「商業者主体の街の活性化」をテーマに調査した班。
取材をしたのは「東神田MEETUP」「神保町古書店街」「神田スポーツ店連絡協議会」の3つ。
今回訪れた3つは、地域のつながりを大事にしながら活動しているそうです。
地域のつながりを強めていけば人と人との距離も縮まり、訪れた人との距離も縮めていけるのではないかと考えました。
取材先の「東神田MEETUP」を運営する角田さんからは、地域の中に気軽な地域交流の場が必要であり、まずはやってみるという気持ちで活動を始める必要があるのではとコメントがありました。
また、杉崎先生からも、地域に開くことで、地域とつながりながら特徴的な取組みをしているところを今回の取材先として設定している、地域を知るにはそういった特徴を把握することも重要だとの補足もありました。
③多様な人たちのつながり
3番目に発表したのは、「多様な人たちのつながり」をテーマに調査した班。
取材をしたのは「あるまっぷ」「海老原商店を生かす会」「ちよとも」「千代田区100人カイギ」の4つ。
お話を伺う中で、多様な人たちのつながりを実現させるためには、きっかけや交流の場を増やすことが大切だと考えました。
取材先の「あるまっぷ」を運営する山森さんからは、フリーペーパーでの取材を中心に人と人をつなぎ、そこから色々な価値を生みたいたいというお話がありました。
また、「ちよとも」を運営する高橋さんからは、多世代、異業種多業種の交流についてハードルを下げて運営することを心がけている。それは、ボランティア活動などに関わって行きたいという人が、アンケート調査ではたくさんいるということがわかっており、そういった方を千代田区につなげたいために行っているという補足がありました。
さらに、杉崎先生からは、個人で地域に関われるという例として取材先を設定したこと、そういった機能を果たす魅力ある場が千代田区には多いと説明がありました。
④地域の魅力を高める市民による活動
4番目に発表したのは、「地域の魅力を高める市民による活動」をテーマに調査した班。
取材をしたのは「千代田まちづくりサポート(まちサポ)」「海老原商店を生かす会」「神田プロレス」の4つ。
お話を伺う中で、市民による地域での活動のきっかけ・地域の魅力を高める市民による活動が生まれる仕組みを作ることが大事だと考えたそうです。
当日は、取材先の「まちサポ」ご担当者の方もいらっしゃったので、講評がありました。「まちサポに応募するなら、どんなプランを?」と聴かれ、戸惑う一幕もありましたが、「PRが地域の課題になっているので、そこに関わることができれば」と回答していました。
また、杉崎先生からは、千代田区でも市民活動があることをまずは知ってもらいたいが、そのテーマがとてもユニークであることが千代田区らしいと感じている。さらに、特に「プロレス」というツールが色々な人をつなげる装置になっていることが大変ユニークであるが、そうしたことが実現できるのもまた千代田区らしいのではと解説がありました。
⑤高齢者・障がい者の居場所づくり
5番目に発表したのは、「高齢者・障がい者の居場所づくり」をテーマに調査した班。
取材をしたのは「ドレミの丘」「ふれあいサロン神田」「千代田区障害者よろず相談MOFCA」「千代田区社会福祉協議会」の4つ。
千代田区内では、「居場所」についてのハード面の整備は充実していますが、以下のような課題があるそうです。
①活動の担い手の確保
②法や縦割り行政の壁
③高齢男性の参加が少ない
千代田区と福祉というイメージを学生が持っていなかったようで、いずれも普段、目を向けないと気づかないことが多かったので、調査が有意義であったとのことでした。
また、MOFCAの高橋さんからは、フリースペース、相談、イベントを連動することに工夫していること、本格的なイベントの開催を通じて、家の中で引き困っている方に届け、出てくるきっかけにし、その場所となり、必要に応じて専門家につなぐ、そんなことができればと思っていると補足がありました。
社会福祉協議会の新元さんからは、学生がボランティアをしたいと思ってもらえるまで関心を持ってもらえたのはうれしい、社会福祉協議会では地域福祉の観点からつながりづくりをサポートしており、これからも身近な場所で居場所を作りたいというお話がありました。
杉崎先生からは、居場所に関係がないと思っている学生に、現場の熱意や課題を感じてもらいたというのが狙いだったという説明がありました。
⑥災害時に備えた企業と住民の連携
6番目に発表したのは、「災害時に備えた企業と住民の連携」をテーマに調査した班。
取材をしたのは「都市防災研究所」「日建設計」「飯田町町会」の3つ。
防災に対する取組みに対して取材し、同じ防災対策という同じ目標で活動していても、それぞれの立場で目線が異なることがわかったそうです。そうした目線が異なることを互いに知る場として、地域コミュニティであるのではないか、関係性づくりが重要ではないかと感じたそうです。
杉崎先生からは、千代田区は昼間人口が多いのが特徴であり、防災についてもそういった課題もあります。そのため、日頃の活動として日建設計が中心となり飯田町町会と防災訓練をしていたり、お祭りに周辺企業がサポートしていることが紹介され、一つの地域で色々なリソースがあり関わり合っているというのも、千代田区らしいのではないかというお話がありました。
⑦インバウンド対応
7番目に発表したのは、「インバウンド対応」をテーマに調査した班。
取材をしたのは「おもてなしランナー協会」「千代田区観光協会」「庭のホテル東京」の3つ。
インバウンド対応としては、「日本人と外国人のマナーの違い」が大きな問題と感じたそうです。今後、日本のマナーを外国人の方々にも周知する必要があるとのことでした。
杉崎先生からは、このテーマを設定して、意外と千代田区とってはインバウンドはテーマだと改めて感じたこと、宿もたくさんあり、皇居の周りには観光客の人は多く、千代田区の魅力をどうやって来た人に伝えるのかというのを地域の色々なセクターの人が工夫をし、積極的に取り組んでいる。そのことは、他の地域には参考になるのではというコメントがありました。
⑧生物多様性推進
8番目に発表したのは、「生物多様性推進」をテーマに調査した班。
取材をしたのは「千代田区環境政策課」「三井住友海上」「三菱地所」の3つ。
印象的だった言葉は「生物多様性推進や環境保全に関して参加する企業が少ない」だそうです。
三菱地所の坂村さんからは、皇居は生物が豊富な場所であり、レッドリストに掲載されているような生物もいるが、そこから広がっていないことが課題になっていること、皇居から生物を都市に呼び戻し出したいという思いで活動していること、将来的には町の中にグリーンベルトを作って行きたいことについて説明がありました。
また、杉崎先生からは再開発をすることで地域貢献、環境貢献することがセットで誘導されているのが千代田区らしく、こうした再開発はこれからもあるので、環境保全など可能性があるのではという話がありました。また、事務局からも、生物多様性の取組については、区の政策としても重点施策になっており今後が期待される旨の話もありました。
意見交換&休憩
■第2部 千代田への理解を深めるグループトーク&交流会(学生、活動実践者、参加者の交流の場)
続いて、第2部は「千代田への理解を深めるグループトーク&交流会(学生、活動実践者、参加者の交流の場)」を行いました。
グループトークのテーマは
1. 千代田区らしいって?
2. 千代田区が10年後、より良い街になるためのテーマ
学生さんと活動実践者の方、一般参加者の方々が混ざってA~Fの6つのグループに分かれて対話を行いました。
対話の中で出てきた意見を抜粋して紹介します。
▼1. 千代田区らしいって?
- あることに特化した店が色んなところに。企業も含めて意外と商業を感じた。
- オフィス街のイメージが強い。
- 大学も意外とある。
- 住んでる人は少なさそう。
- 昼間人口が多いという意味では多様な利害関係者が。
- 千代田区内の各地域によって特色がある。全体としての特徴は難しい。
- 今までに千代田区で秋葉原くらいしか行ったことが無かった。大学も千代田区の感覚が無かった。
- 千代田区は旧麹町地区と旧神田地区で特色が違う。麹町は政治家などお金持ち寄り。神田は庶民が多い。
- 皇居が昔、江戸城だった事実を知らない人も居る。江戸時代の町割りが今も生きている。街区が違うことが街の特色の違いにも出ている。
- 新しいものを開発しているところもあれば、昔から残るところも。それぞれがつながるような活動が出来れば。
- 秋葉原は住民が思ったより多い。
- 江戸時代の文化と重ねて千代田区を眺めると面白い。
- 千代田区は中高が少ない。私立に行く子どもが多い。
- 国会があり、政治のイメージ。
- 古書店街、スポーツ街。
- 色々な文化に歩いて触れられる。
- 江戸城があったことから地盤の良さ。
- 千代田区は日本の縮図だと思う。日本全国のことが小さく色々と起きている。
- 人に例えると、ポテンシャルは高いが引っ込み思案の感じ。お金も人も、モノも、取組みもあるが、見せていない。今日の発表の中でも、知っている活動はなかった。
- 自分の住んでいる鎌倉に中間人口が多いという点では似ている。しかし、鎌倉には都会感がないが、千代田にはある。お互いに刺激し合えるまちという印象だ。
- 屋外での喫煙がいち早く禁止されたり、防災の取組など、何にも日本の中で一歩進んでいるイメージだ。
- 千代田区には高齢者の施設があったりと、自分の知らないことがたくさんあった。そういった取り組みを区民に知らせてほしい。
- 新しいことがいっぱいあるのに、あまり目立たないイメージ。知れば知るほど、どんどん出てくる。奥ゆかしいのか。
▼2. 千代田区が10年後、より良い街になるためのテーマ
- 良い街は人によって異なる。休みの日に人が多いのが良いと思う人と嫌だと思う人と。
- 地元の人が満足できる街にできれば。
- 街に若さやエネルギーが必要。でも、単なるにぎわいではなく。せっかく、大学が有り、学生さんが居るからこその動きが出来れば。
- 昔の世代の遊びやゲームを生かせないか。
- より良い街になるためにはバリアフリーの強化を。
- 自分の町という意識を持ちづらいのではないか。住んでいない人がどう関わって、10年後を考えて行くべきなのか。
- 多様な顔を持つのはすごくよくて、このままでいいと思う。外国人の中には、住民と交流したい人も多いようだ。観光客であっても、ここに愛着を持ってもらうことが大事では。
- 有償ボランティアが広がるツール(地域通貨)のようなものがあればよいのではないか。学生でもそういったものがあれば、地域に関わりやすい。
- 緑化などは余裕のある企業しか取り組めないところはある。千代田区には、力のある企業が多いので、緑化などは協力して進めていくべきではないか。
- 面白いものや課題はたくさんあると思うが、それを認識できていない。そういったものを浮かび上がられるものがあるとよいのではないか。
一通り、グループトークが終わり、何人かの方に本日の会の感想を話して頂きました。以下の通りです。
▼感想
- 住民だが、千代田区の施設のことやプロジェクトのことも知らなくて、もっと知らせて欲しいなと。
- 子どもがキーになるのではないか。
- 秋葉原、番町、神田、麹町それぞれ違う。多様性が高い。逆に言うと一様にまちづくりはできないので、それぞれに合った街づくりが必要かと思う。きめ細かい対応が行政にも町会にも必要かと思った。
■まとめ
会の最後には、法政大学の杉崎先生よりまとめの言葉を頂きました。
杉崎先生いわく、
・学生と実践者共に、お互いが揺さぶられるような言葉があったのでは。
・学生が行く場をたくさん作っていくのが僕ら(先生)の仕事で、これから更にこういう場を作っていきたい。
とのことでした。
また、広石からは
・つながりは様々な観点から必要。
・これからも、ちよだコミュニティラボとしてはイベントや情報発信も行っていく。
と話させて頂きました。
会が終わっても各所で話し合いは続き、新たなつながりが出来た場となりました。