【ゼミ 第5回:レポート】対話をもり立てる進行役(ファシリテーター)の技法

「マンション・コミュニティ・ゼミ」の第5回が2017年8月30日(水)19:00~、千代田区役所内の会議室にて開催されました。

今回のテーマは「対話をもり立てる進行役(ファシリテーター)の技法」。

ファシリテーターの役割と重要性の話、また、ゼミ生の皆さんによるファシリテーターを立てながらの話し合いの様子をご紹介します。

■導入講義「対話をもり立てる進行役(ファシリテーター)の技法」

最初に前回の「多様な参加者の交流・対話の場の企画・運営法」の内容について振り返りました。

多様な意見、違う意見を持つ参加者同士の対話は、面倒ではありますが、状況を多面的に理解でき、話が深まるという点で意義があります。

そうした違う意見を持つ人同士が話しやすくするためには、「正解のない問いをめぐって対話する」という方法が有効。

その対話に当たってはテーマ、ルール、そして進行役が必要です。

その進行役を「ファシリテーター」と呼びます。
ファシリテーターは、テーマ、進め方、ルールといった場の前提を定め、進行に責任を負います。

対話の場において、一人ひとりが自分に責任をもって話したとしても、 話したいこと、話す背景、得たいこと、参加スタイルは違います。

なので、誰かが「場」の前提や進め方、スタイルを定め、運営に責任を持つ必要が出てきます。

それが、ファシリテーター。

場づくりには、プレゼンテーションファシリテーションの2つの要素があります。

参加者が聞き手であり、話し手の専門性・話す技量が満足度を決めるプレゼンテーションに対し、参加者が主役で、参加者が、どれだけ参加できたか、自分で気付けたかが満足度を決めるファシリテーションをするのがファシリテーターです。

その基にある考え方は、

  • 一人ひとりの経験や知恵、考えには価値がある
  • 人はやりとりを通して、自分のことも、他人のことも自分自身で発券したり、気付きを得たりできる
  • 自分から聴き、聞き合う関係をつくる
  • お互いの理解は「問いかけ」から始まる
  • 共につくっていくためのプロセスとルールが必要
  • 自分が一番、「問い」への答を探求している存在

そんなファシリテーターの役割は大きく5つ。

  • グループのまとめ役
  • 議題遂行の担い手
  • ポジティブな姿勢のロールモデル
  • 議論を深める/広げるサポーター
  • 参加者のためのコンサルタント役

参加者に集う目的や自分の役割を思い起こさせ、時間管理や全員の意見表明・議題への集中、議論のまとめなどを行い、オープンな雰囲気をつくり、他者の話の聞き方を意識し、疑問や対立を明確化する。

そして、行き詰った時の助け舟を出したり、参加者へのフィードバックをする。

ファシリテーションのコツとして紹介したのは以下の7つ。

①何のために行うのか、どう進めるのか、共有する
②最初にルール(守るべきこと)を説明する
 ⇒途中で「反乱者」が出てきた時、先にルールを伝えておくと対応しやすい
③最初は「経験したこと」から話してもらう
④うなずく、書くなど、受け止めているサインを出す。
 意見を否定せずに、必ず受け入れ、それから自分の考えを伝える(Yes, and…)
⑤時間をプロセスに区切る(1つの時間には1つのこと)
⑥出ている意見を使って展開する
⑦迷ったら、ゴールを思い起こす

場の主役は参加者の方です。

自分が意見を引き出し、盛り上げ、まとめるのではなく、参加者が話し、やりとりを楽しみ、答に向かってまとめていくのを手伝うこと。

そのために、ルートとプロセスを明確にし、逸れた時や迷った時に方向を正し、ともに作りやすく、整理しやすいような環境をつくることが大事です。

ここまでで、参加者の方からいくつかの質問がありました。

Q. 話し合いを進めていく内にテーマが何だったか忘れてしまいます。どうすれば良いでしょうか?

A. ホワイトボードに書いておくのが効果的かもしれません。迷った時に、こういう話をしていたんだよね、と戻れるので。
何について話し合うのかを書かずに、意見だけを書いてしまうケースがありますが、テーマに関係ない意見は書かなくて良いはずなので、まずテーマを書いておくことが大切です。

Q. 相手が喋り終わる前に喋り話してしまいがちです。どうすれば良いでしょうか?

A. 日常的な場で、それは必ずしも悪いことではありません。しかし、進行役の立場の場合は別。大切なことは、相手がしっかり聴いてくれたという感覚を持ってもらうことです。なので、まずは、聴いている態度を見せることからはじめてみてください。

Q. イベントが上手く終わらせられません。イベントの締め方は、どうすれば良いでしょうか?

A. 色々な話が出た後、最後に、改めて参加者が参加した目的を思い起こさせることが大切です。そして、その目的に対して、参加者の皆さんの話が貢献したことを伝えられると参加者の方の満足度も上がります。
ファシリテーターとしては、参加者の皆さんのイベント後の生活まで考えて、締められると、なお良いと思います。

Q. 多くの人は自分の意見を述べることに慣れていません。どう意見を発言することを促せば良いでしょうか?

A. いきなり話しはじめてもらうのは難しいです。だからこそ、最初に事前プログラムとしてのインプットの時間を設けてみてください。

ワーク「ファシリテーター体験」

講義と質疑応答の後は、2つの班に分かれ、実際にファシリテーターを体験して頂くワークを行いました。

まず最初に、「チームが効果的に動くには、どうしたらいい?」かを考えるべく、有名なプレゼンテーションイベントTEDにおけるトム・ウージェック「塔を建て、チームを作る」という動画を参加者全員に観て頂きました。

動画を観た後、班内でメンバーひとりひとりから動画の感想と、動画を見て考えた「チームが効果的に動くためのポイント」だと思うことを、全体で5つ以上、出してもらいました。

その中で、出されたポイントについて、自分の職場や地域などで活かすには、どうしたらうまくいか、どこが難しいか話し合いました。

最後に、チームが効果的に動くために、これから自分の現場で工夫したいこと、実践したいことをまとめ、発表してもらいました。

「チームが効果的に動くためのポイント」については、

・最初にざっくりと目標を設定しておくこと
・考えることに時間を割かずに、まず作ってみること
参加者の得意なことを事前に把握しておくこと
・参加者の得意なことで役割分担すること
・報奨に金銭的なものを設定するのはやめること

など地域の活動経験から、さまざまな意見が出ました。

実際に各班でファシリテーターを担当した方に感想を伺うと

参加者の皆さんの協力があったから上手くいった
・ファシリテーターが全てではない
・テーマ外の話が盛り上がりすぎた時の戻し方が難しい
・誰も発言せず話が詰まった時の進め方が難しい

など、実際に体験したからこその感想が並びました。

ファシリテーターは実際に体験してみないと、その重要度も役割もコツも、しっかりと理解することはできません。

しかし、コミュニティを運営するに当たって対話の場は必要で、そのためにファシリテーションのスキルを身に付けておくことは効果的です。

振り返りシートには

・ファシリテーターがイベントの最後にどうまとめるのか、教えて頂いたので参考になりました。
・話が行き詰った時に、出ている意見を使う方法は役に立ちそうです。
・ファシリテーターの難しさをあらためて認識しました。
・ファシリテーターには技量的にも、心理的にも余裕が大切であることがわかりました。

など、ファシリテーターの難しさは実感したものの、前向きに改善していけそうといいポジティブな意見が並びました。

次回は、待ちに待った「公開対話」。
テーマは「聴こう、話そう これからの千代田のコミュニティのこと」。

ゼミ生のみなさんの問題意識や実践経験から作られた下記の6つの対話テーマに沿って、参加者のみなさんと話を深めていきます。

1)育児・外遊び・習い事などを助け合えるには?
2)高齢者も健康に安心して暮らせる環境とは?
3)会社員の関わり方、退職後の入り方は?
4)つながりを育みやすい街をつくるには?
5)マンションと町会の良い関係をつくるには?
6)地域で孤立する人を作らないようにするには?

定員間近ではありますが、まだ参加者は募集しています。

千代田区に何らかの関わりがある方の中で、6つの対話テーマに興味がある方、千代田のコミュニティを考えたい方は下記よりお申込みくださいませ。

以上で、第5回「対話をもり立てる進行役(ファシリテーター)の技法」のレポートは終わります。